食肉卸の原価管理の課題と、システム化の道とは

食肉業界向け

「日々の粗利が把握できていない」「原価計算がどんぶり勘定になっている」というお声は、いまでも多く聞かれます。原価管理は緻密にやろうとすると手間やコストがかかって運用が続かず、逆にどんぶり勘定になりすぎると属人化の問題や正しい売価設定ができずに利益悪化の恐れがあります。原価管理は「自社の業務事情に合った落としどころ」が重要です。本記事では、食肉卸の原価管理の課題とシステム化の方向性を解説します。原価管理を改善したい食肉卸売業者様のご参考となれば幸いです。

原価管理はなぜどんぶり勘定になるのか

粗利計算に必要な「売上原価」

言うまでもないですが、粗利の算出方法は「売上-原価」です。粗利を捉えるためには原価情報が必要になります。売上原価=販売した商品をいくらで調達したのか、ということなので、よそから商品を買って売る場合は買った値段(仕入原価)、製造して売る場合は原料費などの製造にかかった費用が原価です(製造原価)。原価以上の値段で売ることができれば、手元に利益が残ります。

営業利益レベルを捉えるには、販管費を上乗せした原価設定が必要

ここから必要になるのが財務会計の視点です。経営者様が捉えたいのは、「1000円で仕入れた商品を1200円で売ったので、粗利は200円」という情報ではなく、販管費(売るためにかかった人件費などのコスト)を差し引いた「営業利益」でお金がどれくらい残ったか、だと思います。1つ1つの商売で着実に営業利益を残していくには、仕入原価+販管費以上の値段で販売しなければならない、ということです。

とはいえ、その販売商品にかかった販管費がいくらなのかを厳密に算出するのはほぼ不可能でしょう。だからこそ、原価管理はどんぶり勘定になりやすいのです。

食肉管理パッケージの原価設定方法とは

仕入れ商品をそのまま販売する場合

原価管理の見直しを図ってシステム化する場合の現実路線としては、ひと月の販管費を何らかのルールで按分し、商品単価に配賦するやり方しかないでしょう。このひと月の販管費が配賦された商品単価のことを、弊社食肉パッケージsmartBPCでは「評価単価」と呼んでいます。仕入入力画面より、仕入単価とあわせて評価単価を設定する仕様です(下図では200円配賦)。

受注入力や売上入力時には、原価金額欄にその商品に設定された評価単価を表示し、営業マンはそれ以上の金額で売価設定します。

同じ商品でも仕入原価がバラバラな場合

特に食肉卸のような生鮮品を取り扱う会社では、同じ商品がすべて同じ仕入原価とは限りません。市場価格変動に加え、個体差や鮮度差で商品価値のブレが存在するからです。在庫50c/sのなかから1c/sを販売する場合、「その1c/sの仕入原価(≒評価単価)」を知る必要があります。「その1c/sの仕入原価」をどう捉えるかについては、いくつかパターンがあります。

■移動平均法:仕入原価を在庫数で平均する(入出荷の都度、在庫残数で再計算)
■個別原価法:1c/sごとに実際の仕入原価を記録しておく(単品バーコード管理が必要)
■最終仕入原価法:直近の仕入原価を適用する(価格変動がある商品は使えない)

ほかに総平均法や標準原価法もあり、これらを商品ごとに使い分けたり(高額商品は個別原価法にする等)、ときに計算方法を見直したりします(経営改善等)。

食肉カット加工を行う事業者の原価設定方法とは

歩留まり率を算出し、加工賃の要素を加える

食肉カット加工では歩留まりが発生するため、歩留まり率を算出してkg単価を再設定する必要があります。食肉システムにおいては、在庫ラベルや加工指示バーコードを使って原料重量と出来高重量を紐づけ、歩留まり率を算出するのが一般的です。これでkg単価の再設定は可能なのですが、実際には加工賃(人件費や水道光熱費、梱包資材等)まで含めたものが最終的な製造原価になるため、そうなるとキロあたり加工賃を算出する必要が出てきます。

原価への加工賃配賦をどのようにシステム化すべきか

ただ現実的には、加工賃を稼働実績に基づいて厳密に算出できることのほうが少ないので、歩留まり管理のどんぶり勘定脱却(=原料と出来高の紐づけ徹底)を行い、加工賃はマスタ管理するのがよくある落としどころです。弊社の食肉システムでは、「仕入原価に歩留まり率を反映させた単価+あるルールに基づき事前設定された加工賃」を評価単価として使用することになります。

評価単価を設定することのメリット

売上集計表の利益と、損益計算書の利益

評価単価を設定した状態で売上入力を行い、売上集計表を出力すると、利益欄には「損益計算書(P/L)でいうところの営業利益」に近い数字が表れるようになります。ただし、たとえば先月の売上集計表の利益総額とP/Lの営業利益を見比べたときに、金額が完全一致していることはまずありません。なぜなら売上集計表は見込みの販管費を、P/Lの販管費はその月にかかった本当の販管費を使って算出されているからです。

営業利益に近い値をデイリーで捉えられるようになる

その月にかかった販管費が確定するのは、早くて翌月前半(従業員の残業代や水道光熱費の月次請求書が届くまでわからない)。仮にそれからしか利益算出できないと、その取引/その日/その月にどれくらいの営業利益が出せているのか、状況把握や改善判断が遅れてしまうことになります。だからこそ「評価単価」という項目を用意することで、正式な(財務会計上の)営業利益が出る前に、販売管理システム側で随時「(管理会計上の)利益」として見れるようにしているわけです。

評価単価を正しく運用しないと、どうなるか

評価単価を正しく運用できていない状態とは、「価格変動が激しいのに最終仕入原価法を採用している」とか「加工賃の設定が実態より低すぎる(または高すぎる)」、のようなことです。そうして販売管理システムから出力した売上集計表の利益が、不当に高く見えたり低く見えたりすることはあります。

ただ、これはあくまで販売管理システム(管理会計)における原価・粗利計算の話。損益計算書(財務会計)における売上原価・売上総利益では、実際の伝票金額どおりに仕入原価を捉える※厳密にはその月の仕入原価が丸ごと「売上原価」になるわけではなく棚卸高も算入させるので、財務会計側への影響はありません。

まとめ

本記事では、食肉卸における原価管理の在り方とシステム化の方向性について解説しました。

仕入れ時に評価単価を別途設定できるようにすると、販管費まで考慮した原価設定と売価設定を行えるため、営業利益レベルの損益管理が可能になります。評価単価の設定方法については、ひと月の販管費を何らかのルールで按分して商品単価に配賦する方法や、食肉カット加工を行う事業者様であれば歩留まり管理と加工賃をシステム管理して設定する方法があります。

食肉管理パッケージではこのような機能が標準搭載されていることも多く、原価管理に課題をお持ちの事業者様にはおすすめです。ぜひ本記事をご参考に、原価管理の見直しやパッケージ選定を行って頂ければと思います。

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