棚卸差異の原因7パターンと原因別対策

食肉業界向け

「棚卸に時間がかかり、月末の残業がなかなか減らない」棚卸差異の原因追及と調整に時間を割かれている事業者さまは多く、帳簿上で実在庫が正確に捉えられていないのがその要因です。在庫管理改善と棚卸業務の時短を実現していただけるよう、この記事では、棚卸差異の原因7パターンと原因別の対策をご紹介します。

棚卸差異が大きいことの問題

月末の棚卸業務に時間がかかる

実地棚卸の結果(実在庫)と帳簿在庫に差異がある場合、帳簿在庫を実態どおりに正さなければなりません。具体的には、当月分の納品伝票や出来高記録とモノの動きを突き合わせて差異発生箇所を突き止め、伝票内容の修正や在庫データの調整を行うといったことです。誤差が大きければ大きいほど所要時間は増え、生産性低下や事務コスト増へと繋がっていきます。

実在庫より帳簿在庫が多いことのリスク

実地棚卸の結果、実在庫より帳簿在庫のほうが多かった場合、本当は10ケースしかないのに15ケースあると判断して注文を受けてしまうということです。分納や欠品による機会損失を招くだけでなく、顧客サービスや信頼性の低下にも繋がってしまいます。原料在庫であれば、補充が遅れることで製造計画に悪影響を及ぼすこともあります。

帳簿在庫より実在庫が多いことのリスク

実地棚卸の結果、帳簿在庫より実在庫のほうが多かった場合、本当は10ケースあるのに5ケースを切ったと判断して商品発注を行ってしまうということです。余剰在庫の発生は、キャッシュフローを悪化させます。生鮮品の在庫滞留は商品価値の低下に繋がるため、品質管理や販売・現金化の計画を新たに立てる手間も発生してしまいます。

棚卸差異の原因7パターンと原因別対策

棚卸差異は「実在庫と帳簿在庫が一致していない状態」を意味するので、日常業務にこそ深く根を張った問題です。以降で、食肉業界において実在庫と帳簿在庫が一致しなくなる要因を7つピックアップし対策をまとめました。自社における棚卸差異の主要因を見極め、できるところから取り組んでみてください。

1)商品の検品ミス

伝票や指示書(ピッキングリスト)どおりにピッキングされず、出荷商品や出荷数を間違えてしまったパターンです。特に入荷の場合、入荷商品をあまり確認せずに検品ミスを起こしたまま入庫すると、帳簿在庫と実在庫が一致しないまま出庫や加工が始まり、在庫の動態がどんどん複雑になっていきます。

≪対策≫
▪ 出庫時は、受注情報に紐づいたピッキングリストを基にバーコードを利用した検品を行うことで、ピッキング時にエラーチェックをかけることができる。
▪ 入荷時の検品ミスを防止するには、発注情報や量目表を事前に入手し「入荷予定リスト」を作成の上、発注した商品と入荷された商品の差異チェックを行うとよい。バーコードによる検品を行えば更に精度が向上する。

2)伝票の入力ミス

発注書やピッキングリストに基づいて正しく入出庫検品されているのに、伝票をシステム登録する際に数量/重量を打ち間違えて、帳簿在庫が狂ったパターンです。入出庫した商品の数量/重量の転記ミス、入力ミスをいかに減らせるかがポイントとなります。

≪対策≫
▪ バーコードを利用したハンディ端末による出荷検品を行い、ピッキングデータをもとにシステム登録~伝票作成できるような仕組みにする。
▪ 発注情報などを基に入荷予定データを事前に準備し、ハンディ端末による入荷検品を行い、その検品データをもとにシステム登録できるような仕組みにする。

3)伝票遅延による在庫計上のタイムラグ

不定貫商品を取り扱う食肉業界では、出荷する商品が確定するまで納品書が作成できず、「商品を入荷して数日後にようやく納品書を受け取る」といったことがしばしば起こります。モノの動きと伝票の動きが一致していないため、入出荷の実態と仕入/売上計上にタイムラグが生じるのです。事後処理される仕入/売上伝票をもとに在庫の計上や引き落としをかけるシステムの場合、処理のタイミングによって実在庫と帳簿在庫に誤差が発生してしまいます。

≪対策≫
▪ 仕入/売上とは別に入荷/出荷をリアルタイム管理できる在庫管理システムを導入し、入荷/出荷データと仕入/売上データを連動させる。こうすることで実態とデータ処理のタイムラグがなくなるだけでなく、伝票の処理漏れもなくなる。

4)先日付伝票による「みなし在庫」

モノと伝票の動きは一致していても、伝票日付を翌月指定される(する)ことがあります。仕入/売上伝票の計上日に合わせて在庫処理を行うことで、月末に実在庫と帳簿在庫が一致しなくなるパターンです。こういった取引を行う場合、仕入/売上の計上が翌月となるため、在庫の実態にかかわらず伝票日付に合わせた入出庫調整を行い月末棚卸高を算出しなければなりません。この面倒な計算作業が、帳簿在庫の間違いに繋がってしまいます。

≪対策≫
▪ 仕入/売上とは別に入荷/出荷をリアルタイム管理できる在庫管理システムを導入し、仕入/売上日付と入出荷日付を区別して入力することで実態どおりに管理する。
▪ 月跨ぎの売上で当月末在庫に含めるものは、伝票入力時点で在庫計上フラグを立てる機能を取り入れる。(車中在庫/輸送中在庫のような倉庫項目を設けて運用)

5)棚卸入力ミス

棚卸で実在庫と帳簿在庫の照らし合わせをする際、実棚結果を在庫システムに登録して帳簿在庫との誤差を発見する流れが一般的です。このときの実棚で数え間違えたり、棚卸入力時に打ち間違えたりすると、いくら正確無比な在庫管理を行っていても最終的には棚卸差異となってしまいます。特に外冷在庫を棚卸する場合、FAXなどで送られてきた在庫一覧表を見ながら転記入力する作業となるので、ミスが起こりやすく差異が発生するポイントとなります。

≪対策≫
▪ ハンディ端末によるバーコードを活用した棚卸を行い、入力ミスと転記ミスを減らす
▪ 外部冷蔵庫の在庫表はCSVデータで入手し、自社システムに取り込むことで入力ミスや処理時間を短縮する。(もしくはEDIシステムを構築する)

6)管理ルール不足による不明在庫の発生

自社冷や外冷の在庫管理の仕組みは構築しているものの、相対販売用に持ち出した商品や仕掛品の管理、月の途中で廃棄してしまった在庫など、細かい管理まで行き届いていないパターンです。いわば「記録に残らない在庫の動き」であり、この部分の管理ルールが不十分すぎると、月次棚卸で不明在庫が発生した場合に原因追及が困難になってしまいます。

≪対策≫
▪ 在庫の持ち出し/持ち帰り時はハンディ検品を実施するなど、自社の業務事情に合わせて無理のない範囲で管理ルールを定める

7)原因不明の棚卸差異

廃棄の申告がなかったり盗難にあったりして、どれだけ差異原因を追及しても原因がわからないパターンです。在庫管理に対する従業員の無関心・自分事意識の欠如が問題の根底にある場合、せっかく管理ルールを整備しても徹底されず、棚卸差異がなくならない要因となってしまいます。

≪対策≫
▪ しっかりとした在庫管理システムを構築し在庫を透明化することで、在庫管理に対する従業員意識を向上させる

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さいごに

バーコードを利用した商品管理や物流と商流を分けた事務管理など、工夫することで棚卸差異を最小限に抑えることは可能です。在庫管理改善は棚卸の時短だけでなく、生産性向上・キャッシュフロー改善・滞留在庫の防止とそれによる品質の安定など、さまざまなメリットを生み出します。自社のノウハウから弾き出される在庫適正値をもとに、実態に即した戦略的な在庫管理を実現していただければと思います。

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