BtoC物流の特徴とは~WMS構築のポイントとおすすめ機能

物流業界向け

「個人客向けの誤出荷が減らない」コロナ禍でさらに拡大した通販需要の裏で、EC出荷を担う物流倉庫の負荷は増大し、誤出荷や返品対応などに悩まされている倉庫業者さまは多くいらっしゃいます。そのような事業者さまの業務課題を解消するため、本記事では、BtoC物流倉庫向けWMS構築のポイントと、具体例としておススメのWMS機能をご紹介します。

BtoC物流倉庫の業務的特徴

BtoC型の倉庫業務には、BtoB型倉庫では見られない幾つかの特徴があります。最適な業務プロセス・WMSをデザインするうえで重要な前提条件となりますので、まずはここを押さえておきましょう。

伝票件数が多い

1回でまとまった数量を出荷するBtoB物流と異なり、BtoC物流では取り扱う伝票枚数(受注件数)が多く、伝票あたりの出荷量が少ないのが特徴です。一日の出荷量が同じでもBtoC倉庫のほうがピッキングする回数が多く、出荷担当者の負担が増大しやすい倉庫形態とも言えます。

出荷先が不特定多数

BtoB倉庫は出荷先がほぼ決まっています。これは、例えばカゴ車や出荷エリアに宛先表示して仕分け時の視認性を高めたり、出荷予測を立てて在庫繰りや人員繰りを最適化する、といった改善施策に繋げられます。しかしBtoC倉庫の場合、出荷先は不特定多数の個人客です。宛先確認作業は気力・体力勝負になりやすく、出荷予測についてもBtoBより難しくなっています。

在庫が多品種小ロット

1商品あたりの在庫量が多いBtoBと比べると、BtoC倉庫は商品ごとの在庫量が少なく商品点数が多い、いわゆる「多品種小ロット型」が一般的です。そのぶんロケーションや棚割りが複雑になり、ピッキングに時間がかかったり、類似品のピッキングミスが起こるリスクが高くなります

出荷サービスレベルの高さ

BtoC出荷では、個包装、納品書や請求書・チラシ・プレゼントなどの同梱、セット商品の組み合わせなど、荷主が実施する顧客サービスに伴い細かな庫内作業が発生します。ミスすれば即クレームに繋がるため、検品やチェック作業に費やされる時間は少なくありません。ほかに出荷通知や宅配伝票No通知への対応などもあり、求められる出荷サービスレベルの高さはBtoC特有といってよいでしょう。

BtoC物流倉庫に必要なWMSとは?

自社のWMSにどんな機能を備えておくべきかは、業務上の前提条件が整理できれば自然と明らかになります。システム導入の過程で「要件定義」と呼ばれているプロセスがそれです。上記で挙げた業務的特徴・WMS構築の前提条件をもとに考えると、BtoC物流倉庫に必要なWMS機能とは、おおよそ以下のようなものになります。

誤出荷防止、動態記録のための出荷検品

同じ宛先に何度も配送するBtoB物流と異なり、一見客も多いBtoC物流では、誤出荷の後処理にも手間がかかるものです。類似品など商品点数が多く、宛先照合作業が煩雑でピッキングミス・出荷ミスがそもそも起こりやすいことを考えると、ヒューマンエラーを防ぐための検品システムは必要不可欠です。ハンディ端末による出荷検品を行うことで、荷物トラッキングサービスに必要な出荷通知や宅配伝票No通知のデータの取得も、さほど負荷なく行えるようになります。

ピッキングを効率化するロケーション管理機能

多品種小ロット型であるBtoC倉庫では、商品の入れ替えなどで棚割りが意図せず複雑になったり、同一カテゴリ商品がロケーション分散してしまうことがあります。BtoC出荷はピッキング回数が多いが故、ロケーション効率が悪いとピッキング効率も悪化し、生産性低下に繋がりかねません。これを防ぐには入庫時からのロケーション管理が必要です。これに加えて、最適なピッキング導線を踏まえたピッキング指示ができると、業務課題の解消レベルはより高まります。

伝票処理を簡素化する仕組み

取り扱う伝票件数が多く、また履歴データ活用ができない一見客が一定数いるため、放っておくと事務負荷が大きくなりがちなのがBtoC倉庫です。住所入力などの煩雑なPC作業を減らし、速やかに出荷指示が出せるよう、荷主の注文データを自社WMSに自動で取り込む仕組みを予め作っておかなければなりません。出荷現場においては、納品書や配送伝票と出荷品を宛先照合する作業に時間を取られやすく尚且つミスも起こりやすいため、BtoB物流のように事前準備して仕分けするのではなく、検品時に必要なものを出力できる仕組みが望ましいでしょう。

【具体例】BtoC倉庫におすすめのWMS機能

BtoC倉庫のWMSにはどんな機能が必要なのか、なんとなくお分かり頂けたかと思います。ここからは具体的な機能例として、弊社で導入した多くのWMS事例をもとに、おススメの機能をご紹介します。自社の業務事情を鑑み、ぜひ次期システムのご参考にされてください。

タブレット型検品システム

タブレット端末とバーコードリーダーを持ち運び、ピッキングを行う手法です。タブレット端末は写真画像など表示できる情報量が多く、BtoC倉庫ならではの細かい梱包指示に役立ちます。ピッキングリストはデジタル化されるため、わざわざ印刷する手間や、ピッキングリストを探し出す手間が省かれるのも利点です。紙のピッキングリストとハンディターミナルを使った検品に比べると、特に出荷件数が多い場合ではピッキング効率化の効果が出やすい施策といえます。

オールインワン型ピッキングリスト

ピッキングリストと納品書、配送伝票を一体型にして出力したものです。ピッキング後、ピッキングリストから送り状と納品書をそれぞれ切り離して使用します。ハンディ検品と合わせて使用することで、ピッキングリストと出荷品・伝票類の宛先照合作業がなくなり、テレコ出荷などの誤出荷防止に繋がります。予算上、伝票発行端末を出荷担当者ごとに貸与できない場合には有効な施策です。

フリーロケーション対応

多品種小ロット保管のほか、商品によって単品管理する必要がある場合(商品状態によって一つ一つ販売価格が異なる中古品、個別の出荷管理が必要なシリアル生産された高級品など)には、格納効率を考慮したフリーロケーション運用がお勧めです。フリーロケーションでは熟練者の経験や記憶に頼れないため、変化するロケーションを管理し、適切な入出庫指示ができるWMSでないと実現できません。具体的な機能として、格納商品や混載の可否を棚ごとに事前設定する機能や、庫内作業量が最小化されるよう自動プランニングする入出庫指示機能などがあります。

現場で柔軟に運用できる返品機能

BtoC業務で最も煩雑な作業の一つが、返品の受け入れです。事前連絡なしの返品や、差出人不明の返品、本来返品できない商品状態で勝手に返送されてくるケースもあります。コンシューマは不満があって返品しているのですから、「いかなる返品にも誠実に対応したい」というのが荷主の心情です。倉庫側はこれに応えられるよう、良品・不良品の仕分け検品と、柔軟な事後対応を速やかに行える情報連携システムがあると良いでしょう。荷主に対して即時報告ができる仕組みを作っておくのもお勧めです。

さいごに

BtoB物流とBtoC物流では倉庫側に求められる要素も異なり、同じ設備で倉庫業務が滞りなく行えるとは限りません。BtoC物流の需要は今後も拡大していくと思われ、EC出荷を担う物流倉庫の負担はますます増えることが予想されます。業界の人手不足の問題もほとんど解消されておらず、そのような状況下だからこそ、事業最適化したWMS構築が必要だと私たちは考えます。EC産業を支える事業者の皆さまに、本記事が少しでもお役に立てていれば幸いです。

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