食肉卸に必要な在庫管理システムとは?

食肉業界向け

「自社の在庫管理を見直したい」「本格的に在庫管理を導入したいがどんなシステムを選べばよいのかわからない」在庫管理でお悩みの企業様の中には、改善策を模索している担当者様も多くいらっしゃいます。この記事では、そのような皆さまが在庫管理改善策としてシステム導入・更改を検討する際に、押さえておくべきポイントを解説します。

今の在庫管理に限界を感じる理由

在庫管理がうまくいかないことで生じる問題は沢山あります。例えば、まだ売れ残りがあるのに在庫を作りすぎたり、滞留した冷蔵商品を冷凍にまわして単価下落を起こすなどです。経営者の立場からみても、滞留在庫があるとキャッシュフローが悪化し、資金繰りに頭を悩ませることになります。無論、在庫を持つ企業なら何らかの方法で在庫管理を行っているはずですが、このような問題は後をたちません。原因は主として以下のような事情が推測されます。

Excelソフトで管理している場合

自由度が高いツールであるが故、在庫登録のタイミングが担当者任せになり、ミスや漏れが多発するパターンです。多くの場合、複数のワークシートにまたがって管理されているのも、日々の在庫運用が複雑化する要因となります。

販売管理パッケージで管理している場合

一般的な販売管理パッケージは、モノと納品伝票が一緒に移動することを前提に作られています。仕入や売上伝票入力のタイミングで、帳簿在庫が増えたり減ったりするのです。伝票の後出しが多い食肉業界で販売管理パッケージによる在庫管理を行うと、“今この瞬間の在庫”を捉えられない、という問題が発生してしまいます。

在庫管理システムで管理している場合

入出荷時の検品や滞留在庫チェックなど、在庫管理システムを運用することで健全な在庫管理が保たれます。にもかかわらず在庫管理に問題が発生している場合、原因はシステム側か運用側のどちらかしかありません。運用側の問題であればルールの徹底や在庫環境の見直しで改善が図れますが、システムそのものが食肉在庫特有の管理事情に対応できていないことも考えられます。システムとExcelの二次元で在庫管理しているケースなどは、その典型です。

食肉在庫の4つの特性

どのような管理ツールを導入したとしても、自社で行う在庫運用に則していないと十分な管理はできません。では自社で行う在庫運用とはどういうものなのか、業界の特徴的な業務に焦点を当て、「在庫管理する上で押さえておくべき食肉在庫の4つの特性」をまとめました。

≪在庫管理する上で押さえておくべき食肉在庫の4つの特性≫
1.特有の在庫情報項目
2.在庫の形状が変化する
3.入荷時点にさかのぼる
4.売上目的でない出庫が発生する

尚、実際には取扱商品や取引形態は企業ごとに異なるため「一般的にはそうだが、これはうちでは考慮しなくていいよね」、ということが発生してきます。

1.特有の在庫情報項目

食肉在庫は、同一商品であっても、昨日入荷したものと今日入荷したもので在庫の詳細が異なります。取引や品質管理にかかわる在庫の詳細情報は、確実に管理できる必要があります。

  • 重量(量目)
  • 個体識別番号
  • 製造日や賞味期限
  • 温度帯 など

2.在庫の形状が変化する

入荷後の社内流通の過程で、商品の形状=品番が変わることがあります。こういった場合、在庫価値(単価)が合わせて変動することも考慮しておかなければなりません。

  • 冷蔵→冷凍に変える(商品名や温度帯、在庫評価額の変更が発生)
  • 製造加工して商品が変わる(加工賃や歩留による在庫評価額の変更が発生)
  • バラ売りして、半端在庫(1/2ケース残りなど)が発生する

3.入荷時点にさかのぼる

いわゆるトレーサビリティですが、在庫の動態は非常に複雑です。多くの場合、製造過程や出荷で散り散りになった在庫情報を、入荷単位に束ね直してトレースする必要があります。

  • 個体識別番号のトレーサビリティ(納品先への情報提供のため)
  • 一頭買い商品のトレーサビリティ(損益管理のため)
  • 輸入品など概算取引した在庫のトレーサビリティ(出切重量精算のため)

4.売上目的でない出庫が発生する

食肉在庫は、出庫したからといって必ずしも販売されません。そのような運用に在庫システムの入出庫機能が対応可能か、ぜひともチェックしておきたいポイントです。

  • 製造するための出庫(原料出庫)
  • 売上が確定していない出庫(相対販売用、サンプル品)
  • 保管場所を移動する出庫(冷蔵→冷凍への評価替え、営業所輸送)

在庫管理システムの選定ポイントとは

在庫をできるだけ正確に管理するためには、在庫運用に則した仕組みが必要です。上記であげたようなチェックポイントをクリアしたシステムであれば、動態が煩雑になりがちな食肉在庫であっても十分な管理ができます。しかし、チェックポイントを漏れなく洗い出すのにも時間と労力がかかるものです。そこで今回は共通性の高い在庫管理システムの選定ポイントを、「トレーサビリティ」「在庫量の管理」「在庫の質の管理」に分けて解説していきます。

トレーサビリティ管理

出荷記録から入荷ロットにたどり着きたい場合(出切精算など)は、ロット番号をキーとした在庫管理で事足ります。しかし個体識別番号のトレースや不定貫原料を使った加工歩留算出などは、「入荷在庫のうち、どの在庫であるか」の特定ができなければ成立しません。これには1つ1つの在庫に在庫番号を振り、その番号をキーに入出庫の記録を取り続ける必要があります。まさに在庫に背番号を与えるイメージです。

実際には背番号をいちいち入力していられないため、バーコードラベルやICタグ化してスキャン運用することになります。手間といえば手間ですが、トレーサビリティを実現して在庫の管理精度をあげるには、必要な作業投資だと理解しましょう。単品トレーサビリティを確立できれば、棚卸もグンと楽になります。自社が取扱う商品や業務形態に応じて、必要であれば背番号管理を取り入れてみてください。

「在庫の量」の管理

帳簿在庫の量は、入庫記録と出庫記録の結果で決まります。実在庫状況をシステム上でありのままに捉えるには、すべての入出庫を記録していくしかありません。相対販売用にちょっと社外に持ち出す在庫、加工原料として出庫した在庫、それが余ってしまって倉庫に戻した在庫、すべてです。

在庫が見えないことによる過剰仕入や欠品、原因不明の棚卸損失などの問題が発生していれば、上記のような入出庫記録がとれるシステムが有効となります。評価替えでチルド品を冷凍倉庫に移すのも、結局のところは出庫作業と入庫作業であり、それに品名や単価変更処理が加わっているだけです。あらゆる入出庫記録を業務形態に合わせてどの程度とるかは、在庫管理システム構築の一つの判断基準となります。帳簿在庫が正確だと、仕入・製造コントロールによる適正在庫維持や、従業員の在庫意識向上に繋がります。その点でも細やかな入出庫管理はおすすめの施策です。

「在庫の質」の管理

食品在庫は、賞味期限や温度帯管理が欠かせません。そのような業界に特化したパッケージなら、賞味期限が近い在庫や長く滞留している在庫を、アラート機能などで発見することができます。在庫の質を管理する主たる目的は、不良在庫の発生を食い止めてすべての在庫を現金化することです。ここをどのようにサポートするのか、システム選びの際にはその観点を持つと良いでしょう。

「在庫情報」という点では、食肉在庫は賞味期限や温度帯のほかに、個体識別番号、量目、畜種や産地といったあらゆる情報が付随してきます。こういった情報項目は一般のパッケージでは対応していないため、機能カスタイマイズして対応する必要があります。ただし、在庫機能は仕入・売上を管理する商流機能と地続きです。出荷した在庫情報は、売上商品の情報でもあります。納品書発行や実績管理にも関係するため、トータル設計された専用パッケージのほうがやはり合理的と言えるでしょう。

さいごに

いかがでしたでしょうか?貴社で新しい在庫管理システムを検討される場合は、ぜひ参考にしていただければと思います。

しかしながら、道具を得ただけでは、問題が解消されたり理想の在庫管理を実現できるわけではないのも事実です。とりあえず機能豊富なシステムなら間違いないだろうと大型投資をして、実際に運用が始まってみるといまいち使えなかった、というのはよくある話です。いかなるシステム導入も、最終的には「なんのために、どう使うか」という使用者の問題に行き着きます。在庫管理システム導入の際はぜひとも有効に「活用」していただき、事業の改善へと繋げて頂ければと思います。

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