バーコードラベルを貼れない商品を在庫管理するには?

食肉業界向け

「すべての入荷商品に自社ラベルを貼るなんてムリ」。食肉業界に限らず、在庫を商品別・入荷単位で管理したい場合は、自社でバーコード付きの管理ラベルを発行して商品に貼付することが一般的です。しかし荷姿の問題や運用上の問題で、そう簡単にできない事情もあります。この記事では、バーコードラベルを貼れない商品を在庫管理する方法について解説します。

在庫をバーコード管理する3つの目的

自社で発行するバーコード付きの管理ラベルは、言い換えると社内物流用のラベルです。では社内物流において、バーコードラベルがどのように役立つのかという話になります。バーコード管理には、3つの利点があります。

在庫情報の転記・入力ミス防止

食肉業界において在庫情報というと、品名、産地、重量、個体識別番号、製造日、賞味期限、単価などがあげられます。これらは納品書や量目表への記載事項なので、人的作業である仕入や売上入力(納品書発行)では、転記や入力のミスが起こることもあるでしょう。この点、スキャン入力するバーコード管理では、入力ミスの可能性はゼロです。また国産牛であれば、食肉標準物流ラベル内で商品情報がすでにバーコード化されているため、活用することでミスを防止できます。

商品トレーサビリティ

商品トレーサビリティ=商品を入庫して出庫するまでの動態を記録・管理すること、です。在庫管理システムでは、動態管理する単位で商品に「シリアル番号」を付与することで、これを実現します。したがってバーコードラベルには、上記の在庫情報に加えてこの情報を含めることになります。動態管理の単位については、カット部位(単品)ごと、ケースごと、ロットごとなど、様々です。

入出荷時の検品利用

入荷予定データや出荷指示データを予め用意できる場合、バーコードラベルを入出荷検品に利用することで、それらの予定データと現品との照合を機械で行えるようになります。入荷された商品が発注と違う、類似品を誤ってピッキングしたなど、人が行う作業にはミスが付き物です。一つ一つ目視で確認するより、機械検品のほうがその場でミスを発見できたり、早期対処による業務効率化が可能になります。

バーコードが貼れない商品とは

上記の利点を活かすには、入荷時に、商品一つ一つにバーコードラベルを貼らなければなりません。しかし食肉業界においては、ラベル貼りが簡単でない場面があるのも事実です。

荷姿上、ラベルシールを貼りづらい

食肉処理場から直送で運ばれてくるような商品の荷姿は、簡易的なビニール梱包や使い回しするプラスチックコンテナであることも多いと思います。外装がウェットな状態なら、そもそもシールを貼るのに適しません。特にホルモンや鶏肉を取り扱う事業者さまでは、このような事情からバーコードラベルの導入ができず、在庫管理を諦めるケースが多いのです。

在庫期間が極端に短く、ラベルシールを貼る暇がない

入荷後、一度も倉庫に入ることがない、または倉庫に入れてもほんの短期間で出荷してしまうケースもあります。物理的にラベル貼付できる荷姿であっても、時間の都合上、貼れない(貼ってもムダ)なのです。申し上げたように在庫ラベルは社内物流ラベルなので、社内物流がほぼ発生しないのなら、わざわざラベルを貼るのはナンセンスとも言えます。

一度に入荷する商品の量が多すぎる

事業者によっては、一度に500~1000ケース(1商品あたり)の量を入荷することもあるでしょう。すぐに全量出荷するのは稀なので、普通であればバーコードラベルによる在庫管理が必要です。しかし短時間でそれだけのラベル貼付が出来るはずもなく、現実問題として難しいのが現状です。

バーコードが貼れない商品の在庫管理方法

上記のような理由で商品にバーコードラベルが貼れない場合でも、別の方法でバーコードラベルを活用することはできます。ただし在庫管理で出来ること・出来ないことがあるので、よく検討したうえで導入する必要があります。

パレットにバーコードラベルを貼る

入荷商品が積み付けてあるパレット(1ロット)につき、1つのラベル(=1つの在庫シリアル番号)を貼付します。パレット毎のシリアル番号をキーに在庫の動態記録をとるため、1つのパレットに複数の商品が混ざっている状態では使えません。

○ できること
・ロット単位の在庫トレーサビリティ(1つのロットに1つの在庫シリアル番号を割り振る)
・入出荷時の検品(アイテム検品、賞味期限の逆転防止など)
・在庫情報の転記、入力ミス防止(品名や賞味期限、仕入単価など)

× できないこと
・単品/ケース単位の在庫トレーサビリティ
・単品/ケース単位で異なる情報の取得(重量など)

≪使える場面≫
・ロット管理する商品で、パレットのまま倉庫保管が可能な場合

バーコードブックを使う

商品別のバーコード一覧を印刷し、ファイリングしたりラミネート化したりして、バーコード検品に利用するやり方です。物理的にラベルを貼れないような商品に有効ですが、品目数が多いとバーコードの数も多くなるため、品目分類ごとにレイアウトやタブ分けするなど、使いやすくする工夫が必要になります。

○ できること
・品番単位の在庫管理(在庫を入荷別に捉えられないのでトレーサビリティはできない)
・入出荷時のアイテム検品
・在庫情報の転記、入力ミス防止(品名など固定情報のみ)

× できないこと
・同じ品目でも入荷のたびに変わる情報(重量、賞味期限、仕入単価など)は自動取得できない
・在庫トレーサビリティ(在庫シリアル番号の割り振り)ができない

≪使える場面≫
・物理的にラベルを貼れない商品について、入出荷検品や納品書発行を省力化したいとき

・在庫期間が短い商品の入出庫記録を取りたいとき(在庫シリアル番号は固定ロットNoを割り振る)

保管する棚にバーコードラベルを貼る

商品別の在庫保管場所(棚)が決まっている場合は、バーコードブックを使う代わりに、棚にラベルを貼る方法もあります。バーコードブックによる運用と比べて、該当商品をバーコード一覧の中から探し出す手間や、スキャンするバーコードを間違えるリスクもありません。ただし、棚移動や取り扱い商品の変化に対応しづらい点に注意が必要です。

○ できること × できないこと ≪使える場面≫
… バーコードブックとほぼ同じ

自社ラベルを使わずに在庫管理する

これは国産牛でしか利用できない方法ですが、食肉標準物流ラベルを活用することで、自社ラベルを発行することなく単品単位の在庫管理が可能です。自社加工の部分肉/委託加工された部分肉については、計量データを基に「食肉標準物流バーコード」と「自社発行した在庫シリアル番号」を紐づけることで、単品での在庫管理ができるようになります。

○ できること
・単品(カット部位)単位の在庫トレーサビリティ
・在庫情報の入力ミス・転記防止(食肉標準物流ラベルでバーコード化されている全データ)
・入出荷時の検品(アイテム検品、賞味期限の逆転防止など)

× できないこと
… なし

≪使える場面≫
・国産牛の入荷で、部分肉計量データを自社計量または加工委託先から入手できる場合

さいごに

ご紹介したように、バーコードを貼れない商品についても、バーコードを活用して在庫管理を行うことはできます。しかしどれも運用面の工夫が必要で、出来ること・出来ないことが出てくるのは避けられません。在庫管理は継続性がなければ意味がなく、自社の商材・業務事情に合った在庫管理手法をしっかり検討することが大事になります。弊社では食肉卸事業者さま向けに在庫管理のご相談から承っておりますので、ぜひご相談ください。

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