車輌原価管理の基本|原価管理の方法を3つのポイントで解説

運送業界向け

「車輌別の損益は感覚で把握している」。運送会社の基幹業務に情報システムが導入されるようになって何十年と経ちますが、原価管理においてはまだまだ経験と勘頼りの事業者様が多い印象です。要因には、管理費目の多さや運用の難しさなどが挙げられます。この記事では、主観による原価管理から脱却したい運送事業者様向けに、車輌別原価管理の基本知識と実践するための具体的方法について、3つのポイントに分けて解説します。

車輌原価管理が必要なワケ

運送業の経営環境は年々厳しさを増しています。背景には、排ガス規制強化による車輌価格上昇や燃料価格高騰といった、企業努力では抗えない外的要因が多分に含まれます。こうした環境変化に対応していくためには、事業者自らが経営の高度化を図っていくほかありません。その第一歩が車輌別の運送原価管理です。車輌原価管理は以下に挙げるような事業改善に繋がります。継続的な改善ができれば、どんな環境下にあっても事業を安定させることができるのです。

請ける仕事がコスト割高になっていないか?

荷主から提示された運賃で荷物を運んでいると、実はコストが割高だった、というのはよくある話です。車輌別原価が見えないと、特に全社黒字を出している状況下では不採算輸送を続けてしまいがちです。「この運賃で利益が出るのか否か」「この新規案件は車輌を増車してまで受注すべきか否か」。車輌別原価を捉えることで、担当者の主観によるものではなく客観的事実を基にした正確な判断が行えるようになります。

車輌を能率的に配車できているか?

車輌別の採算管理ができていないと配車品質も低下します。例えば求車や空車状況だけを見て配車を行った結果、原価オーバーして赤字となるケースです。配車時点で車輌別原価を把握できれば、稼働した場合の損益率も見えるようになります。稼働率を考慮しながら、最もコストが抑えられた能率的な配車が行えるようになるのです。

車輌原価管理の基本

車輌原価を構成する要素

車輌別原価を正確に捉えるということは、その車輌を動かすのにかかったあらゆるコストを、“串刺し式”に管理しなければならないということです。これをやって初めて、車輌別の損益が見えるようになります。具体的にどんなコストを管理するのかというと、費目要素別に洗い出せばおおよそ以下のようなものです。

  • 燃料費(軽油・ガソリン費、油脂費など)
  • 修繕費(部品修理費、タイヤ・チューブ交換費など)
  • 車輌費(リース料、減価償却費、自動車税など)
  • 保険料(自賠責保険、対人・対物保険など)
  • 人件費(給与、賞与など)
  • 諸経費(有料道路代、ETC代、フェリー代など)

経験と勘による原価管理を脱却できない理由

上記の費目を車輌別に串刺ししたいのですから、つまりは車輌別のコスト記録が必要なわけです。そしてそれは、どの運送会社においても既に様々な形で存在しています。

例えば運転日報には、輸送業務の過程で発生した燃料費や有料道路代などの諸経費が記録してあります。車輌が稼働していない時に発生するコスト、例えばタイヤ交換などの修繕費や保険料については、取引先からの請求記録なり元帳なりに記録してあるでしょう。人件費も同様です。あらゆるコスト記録は、すでに社内に存在しています。それでも経験と勘による原価管理を脱却できない理由は、コスト把握のリアルタイム性の欠如と、コスト情報が分散していることで車輌別の串刺し集計が困難になっているからです。

原価管理のカギは「リアルタイム性」と「一元化」

車輌別の修理費や保険料などを月次の請求書ベースで捉えようとすると、結局日々の業務内では正当な原価が見えません。そうして現場では「この運賃なら利益が出るだろう」と、経験と勘による受注を繰り返してしまいます。

原価管理は、決算書類を作るためだけの行為ではありません。事業改善に繋がる車輌原価管理を行うためには、発生したコストをリアルタイムに捉える仕組みと、あらゆるコストが車輌に紐づき原価配賦する仕組みが不可欠であると言えます。

車輌原価管理方法 ポイント3つ

車輌原価を管理するためには「発生したコストをリアルタイムに捉える仕組み」「あらゆるコストが車輌に紐づき原価配賦する仕組み」が必要であることを、ここまでお伝えしてきました。では具体的にどのような方法で車輌原価管理を行えば良いのか、以下の3つのポイントに分けて解説していきます。

ポイント1.日次発生するコストの管理
ポイント2.日次発生しないコストの管理
ポイント3.人件費の管理

ポイント1.日次発生するコストの管理

日次(輸送業務の過程)で発生する燃料費や有料道路代などは、運転日報に集約するのが最も合理的です。これらのコストについては、基幹システムの日報入力機能で既に一元管理されている事業者様も多いでしょう。デジタコに記録されるコストでもあるため、デジタコ連動することで入力作業の簡素化が図れるのが特徴です。

ポイント2.日次発生しないコストの管理

日報には記録されないコスト(保険料や修繕費など)まで一元化するには、運転日報と同じデータベースを共有する「車輌経費登録」が必要です。発生の都度、記録を取っていくことで、データのリアルタイム性が保たれるようになります。これらのコスト情報が車輌情報と紐づくことで串刺し集計が可能になり、ようやく車輌別原価が捉えられるようになります。

リース料や減価償却費などの車輌費については、車輌固定費としてマスタ管理しておくと手間も省けてよいでしょう。日報管理、車輌経費管理、固定費管理と、すべてを同一システム内に構築しておくことで、漏れのない原価管理を実現することができます。

ポイント3.人件費の管理

一カ月同じ車輌に乗務するドライバーなら、そのドライバーへの賃金が車輌の人件費コストです。一人のドライバーが日によって車輌を変える営業形態であれば、ドライバー毎に日給算出し、乗務実績に応じて車輌原価に配賦する必要があります。どのみち、人の手で毎日行うには大変な労力がかかる作業と言えます。車輌人件費をスムーズに管理するには、給与システムと連動させて自動化するのがやはり望ましいです。乗務体系は事業者によって細かく異なり、もっと複雑な計算処理を要する場合もあります。

多様な乗務手当てについては、運送日報の入力内容に応じて、システムで自動管理すると良いでしょう。

さいごに

いかがでしたでしょうか?

上述するコスト管理が実現できれば、日次で捉えられる車輌原価は財務会計のそれに限りなく近づきます。ですがすべてを実現できずとも、できるところから取り組むことで原価精度は間違いなく上がります。車輌原価管理は、改善のための手段です。判断材料の質が高まれば「経験や勘による原価管理」から脱却し、改善箇所のアタリも容易につけられるようになるでしょう。業界を取り巻く厳しい環境の中、本記事が、運送事業者様の車輌原価管理による経営・現場改革のきっかけとなれたらと思います。

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