傭車先への運行指示を電子化するWebシステムとは?

運送業界向け

「毎日、運行指示を行うための電話やFAXに追われている」傭車先への配送業務委託は、事前に採算計算できて受注と原価のバランスをとることができる反面、傭車先が増れば指示や伝票処理などの付帯業務も増えます。これを効率化するには、Webシステムが有効です。この記事では、傭車先への運行指示などを電子化するためのWebシステムについて、具体的な機能例を交えながら解説します。

傭車関連業務は、これだけ電子化できる

運行が固定化したチャーター契約であれば、傭車先に毎日運行指示を出す必要もなく、日々の事務作業が大きく圧迫されることはありません。しかし実態はスポット配送や日々作業指示を行わなければならない輸送も多く、運行指示を行うための電話やFAXに追われている状態です。これを効率化するには、システムによる業務電子化が不可欠になります。そこで、まずはどんな業務を電子化できるのかをまとめました。

【自社側の業務】
▪ 荷主からの注文内容を確認しながら、運行指示書を作成する
▪ 運行指示書を傭車先に送付する
▪ 傭車運行実績(日報情報)を収集して売上処理を行う

【傭車側の業務】
▪ 運行指示書を受領し、確認する
▪ 自社ドライバーに対し、運行指示を行う(指示書作成)
▪ 運行実績登録を行い、売上処理を行う(請求書発行)

「Webシステム」は、自社側/傭車側の双方で上記のような業務を電子化することができます。スピード感が求められる運送業界では、傭車先への依頼や指示を書面ではなく電話1本で行うケースもまだまだ多いでしょう。このスピード感を落とすことなく業務が合理化され、言い間違い/聞き間違いのリスクまで減らせるのが「Webシステム」なのです。

そもそもWebシステムって何なのか

ここでは、基本知識となる「そもそもWebシステムとは何なのか」について簡単にご説明します。(必要のない方は読み飛ばしてください)

Webを介し、双方向の情報交換ができる

Webシステムはその名のとおり、Web上に置かれたシステムです。通販サイトにアクセスするときと同じように、パソコンのブラウザソフト(ChromeやMicrosoft Edgeなど)を通してシステムを利用します。Web上にあるからこそ、自社と傭車先で同じシステムを使いながら「いいですか?→いいですよ」という双方向の情報交換が可能になるのです。(※もちろんログイン権限を与えたり専用のネットワーク回線を引いたりと、安全性を確保したうえで行います)

クラウドだけがWebシステムではない(買い切り型もある)

Webシステムと聞くと、「クラウド会計」のようなソフトウェア商品を想像する人も多いでしょう。ご存知のとおり、サーバやソフトウェアを購入しない代わりに、Web上で提供されるシステムを利用料を払いながら使う形態です。だからこそ、Webシステム=ランニング費用がかさむ、というイメージが付きまといます。

ですが解説したように、Web上にシステムがあればそれはWebシステムです。自前で購入したソフトを自社のWebサーバ上に置けば、Webシステムとして使うことになります(通販サイトなども同じ仕組み)。そういうわけで、ここではWebシステム構築にランニング費用を抑えるやり方もあることをご理解いただけたらと思います。

傭車管理に必要なWebシステムとは?

ここからは傭車手配に関する業務(運行指示や請求処理など)を電子化するためのWebシステムについて、具体的にどのような機能が必要なのか、解説していきます。

注文データの取り込み機能

傭車先への配送依頼は、チャーター契約を除けば「配送受注→運行指示書作成→傭車先にFAX」の流れが一般的です。Webシステムでは、これをWeb上で行うことになります。

「配送受注→運行指示書作成」の流れについては、基幹システムに注文データ(受注登録したデータやオンライン受注データ)があれば、それをWebシステムに取り込む機能があるとよいでしょう。取り込んだデータをもとに指示書を自動生成できるため、受注のたびExcelなどで作成する手間がかかりません。

基幹システムに注文データがなければ「指示入力」のような形で新たに登録作業が必要ですが、Webシステムの運行指示データを最終的に基幹システムの売上機能に連携できれば、結局は売上入力の手間を減らすことに繋がります。

傭車先が “利便性高く使える” 機能

傭車先にとっては、これまでFAXや電話で受けていた運行指示を、Web上で確認することになります。ペーパーレス化に積極的な傭車先ならまだよいですが、なかには「余計な手間」と認識されるケースもあるでしょう。だからこそ、傭車管理の電子化を推進したければ「傭車先が喜んで使いたがるシステム」にしなければなりません。例えば以下のような機能です。

  • 傭車先の運行管理者がドライバーに指示を出すための「指示書出力機能」
  • 運行指示データの確定処理により実績報告ができる「実績(日報情報)出力機能」
  • 実績データから請求データを自動生成できる「請求書出力機能」
  • 請求データを基幹システムの売上機能に繋げるための「外部データ連携機能」

取引履歴を一括で見れる実績管理機能

業務をデジタル化する意義は、ペーパーレス化や業務効率化だけではありません。蓄積されたデータを分析することでいかなる状況のなかでも活路を見い出し、事業成長を図れる体質を作ることも、デジタル化の大きな目的の一つです。自社と傭車先の双方でWebシステムの受発注データを使った実績管理が行えれば、導入の事業効果は最大化されるでしょう。

自社であれば、例えばひと月の傭車コストや利用ボリュームを傭車先別に集計できれば、傭車戦略の見直しに役立ちます。傭車先にしても、ひと月の受注ボリュームや推移を捉えて車輌計画の見直しを行うなどして、事業全体をスケールアップできるかもしれません。またWebシステムはデータのビジュアライズ(グラフ化など)が得意なので、そのような機能を設ければより事業課題の気づきを得やすくなります。

傭車関連業務を電子化するメリット・デメリット

Webシステムを使って傭車関連業務を電子化することについては、基本的には事業の助けとなるケースが多いでしょう。とはいえやはりデメリットもありますので、最後にその対応策と併せてあげておきます。

Webシステムによる電子化のメリット

▪ 自社側と傭車先側の双方で、入力や転記作業がなくなる
▪ ペーパーレス化で、テレワーク促進に繋がる
▪ 傭車先側でシステム導入したり、機能拡張する必要がない
▪ 自社側と傭車先側の双方で、客観的データに基づいた事業改善が図れる

Webシステムによる電子化のデメリット

▪ 傭車先への説明や理解が必要
▪ 導入のためのコストがかかる

≪対応策≫
▪ わかりやすいサービス説明や操作マニュアルを作成し、傭車先に配布する
▪ 指示書作成などの業務にかかる人員コストと、導入にかかるコストを比較する(
ランニング費用が気になる場合は、オンプレ型で一括購入してサーバだけ外部のデータセンターに置いたり、リース契約で長期的なランニングコストを下げるのも有効)

さいごに

傭車戦略は事業者ごとに異なるもので、傭車関連業務のオンライン化が必ずしも抜本的な事業改善に繋がるわけではありません。まずは自社の生産性や収益性がどこで低下しがちなのか、どの業務プロセスに改善の余地があるのか、しっかりと現状認識することが大切です。弊社では、老舗運送会社である親会社のノウハウを活かし、事業改善のご相談から承っております。

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