ハンディターミナルの選び方:ポイント5つを解説

物流業界向け

技術革新に伴い、最先端機種が毎年のように発表されているハンディターミナル業界。ユーザーとしては選択肢が多いのは嬉しいことですが、最新機種ほど高額で、人数分を購入するとかなりの投資となります。選定の際は、必要機能を満たしながら過剰な投資を抑えるのが理想です。この記事では、ハンディターミナルの選び方を5つのポイントに分けて解説しました。新規導入や買い替え時の参考にして頂ければ幸いです。

ポイント①読み取り方式(レーザー/カメラ)

選定の際、まず考えるのが「ハンディで何を読み取るのか」ということです。これにより選ぶべき機種が変わってきます。読み取る対象によって必要となる読み取り方式が異なるからで、読み取り方式は大きくレーザータイプカメラタイプに分けられます。コスト感としては、単価にして3万円程度の差が出るイメージです(カメラタイプのほうが高い)。

一次元バーコードのみ→レーザータイプ

よく見かける縦縞のバーコードが、一次元バーコードです。入出荷や製造現場では、ラベルや外装、指示書などに一次元コードを表示することがまだまだ多く、一次元コードしか読み取る必要がない場合は基本的にレーザータイプを選びます。最近の機種は、少し離れた場所(棚の上段など)のバーコードラベルも読み取れるほど進化しており、特殊な事情がなければレーザータイプで十分です。

ただし、レーザーは基本的にバーコードに対して水平スキャンする必要があるため、バーコードラベルの向きがバラバラで運用負担が大きい場合は、後述するカメラタイプが最適な場合もあります。

二次元バーコードを活用している→カメラタイプ

スマホユーザーには、QRコード(※)としてお馴染みのバーコードです。“二次元”の名の通り、横方向に加えて縦方向にも意味を持つバーコードなので、読み取りできるのは縦横二次元スキャンができるハンディに限られます。レーザータイプより多少高額ですが、一次元コードの読み取りもでき、また光線とバーコードが水平状態でなくても読み取り可能なため、バーコード種が混在していたりラベル貼付が均一でないような物流倉庫では、導入コストに見合う効果が得られやすいと思います。

なお、二次元バーコードが採用される場面とは、1回のスキャンで読み取るべき情報(各種コードや日付情報など)が多い場合です。バーコードの種類については、別記事で詳しく解説しています。

※QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です

外装の文字を読み取りたい→カメラタイプ

カメラタイプは二次元コードだけでなく文字認識まで可能とする端末も多いです。物流現場での利用用途としては、バーコード化されていない日付情報やロット番号の自動取得などがあげられます。様々な制約でバーコードラベルが貼付できない場合に有効ですが、文字認識モデルの価格は通常のカメラタイプより5万円以上アップすることもあり、それだけを目的とするとコスト対効果は低めです。

文字認識は一般に「OCR」と呼ばれ、OCR機能をライセンス販売するメーカーもあります。二次元コードの読み取りにカメラタイプを利用しながら、必要に応じて後からOCRライセンスを購入し、文字読み取りの機能拡張をする使い方だと効果を発揮しやすいかと思います。

証跡として写真を記録したい→カラーカメラタイプ

二次元コードや文字認識するのに使うカメラタイプのハンディは、いわゆる「写真を撮るためのカメラ」とは異なります。しかし物流現場では、例えばハンディ検品時に梱包ダメージが見つかった場合、証跡として荷姿を写真に残すこともあるでしょう。カメラを取りにいちいち事務所に戻っていては手間なので、ハンディでバーコードや文字を読み取り、写真撮影まで可能したのがカラーカメラタイプとなります。撮影した画像はサーバ側に自動保管されるため、管理の手間が少ないのも利点です。

なお、こういったハンディ端末はPDA型と呼ばれます(詳しくは後述)。

ICタグ(RFIDタグ)読み取り→専用端末または増設型

ICタグは電波を発しているタグで、電波に乗せて情報を受け渡す方式です。別名RFIDと呼ばれ、頭文字のRFは「Radio Frequency(高周波)」を意味します。

これまではICタグの電波を受信するためには専用端末が必要でしたが、最近はバーコードを読み取るハンディ(基本的にはカメラタイプ)にICタグ電波の受信出力ができる専用ユニットを装着して使う、増設型端末も増えてきました。対応するハンディは限られますが、増設端子の有無で大きな価格差が発生するわけでもないので、将来的にICタグを取り扱う可能性がある場合、そのようなハンディを選択しておくのも1つの方法かと思います。

ポイント②画面サイズ(テンキー付き/テンキーレス)

ハンディの画面サイズを選ぶ基準は「1回の読み取りでどれくらいの量の情報を表示するか」です。そのほか、作業者の年齢層などにも考慮する必要があるかもしれません。メーカー各社、画面サイズのラインナップは一通り揃えていることが多く、サイズが一回り大きくなると1~2万円ほど機器単価が変わる印象です。画面サイズは、大きくテンキー付きテンキーレスタイプに分けられます。

2~4インチ(テンキー付き端末)

数字ボタン(テンキー)が付いた一般的なハンディで、画面サイズはだいたい2~4インチ(画面対角線の長さが5~10cm程度)のものが多い印象です。一般的な、伝票番号1行/品番コード1行/品名表示2~3行/注文数1行/検品数1行くらいの情報量であれば、2インチ台でもある程度の視認性は確保でき、3インチ台なら余裕だと思います。

情報量が多くても設計次第で小さな画面に詰め込むことは可能ですが、それで作業効率が落ちてしまっては元も子もありません。実際の現場作業者の意見を聞きながら、無理のない画面サイズを選択するのがよいでしょう。

片手で操作しやすい形状で設計されており、一方に現品やリスト、一方にハンディを持って作業する場合は、好んで選択されます。

4~6インチ(テンキーレス端末/PDA型)

このサイズでは、画面対角線の長さが10~15cm程度になります。スマホのような画面サイズなので、検品作業だけでなく、指示書やマニュアルデータの閲覧など出来ることの幅が広がるのが特徴です。このような端末は、PDA型(Personal Digital Assistant:携帯情報端末)と呼ばれます。

画面サイズが大きくなると、軽量性や片手操作を維持するためにテンキー部分がなくなり、操作は基本的に画面タッチで行います。手袋をしたまま操作するような事業者には向かないタイプのように思えますが、拡張ユニットでテンキーを増設し、従来型のような操作性を実現できるものもあります。

テンキーレスタイプは画面幅が広いため、「片手で握る」というよりは、防護ケースの持ち手に指を通して使用することになります。

ポイント③通信方式(有線/無線)

通信方式は、「ハンディで読み取り/入力したデータをどうやって事務所PCに連携するか」をイメージしていただくとわかりやすいでしょう。PCとハンディを物理的に接続する有線方式と、電波を通じて接続する無線方式に分けられます。端末価格は、メーカーや機種によっては2~3万の価格差が出ることもあります(無線式のほうが高い)。

有線(クレードル)方式

PCとハンディを、通信クレードル(通信ケーブルと充電器が一体化したもの)やUSBケーブルなどで物理接続します。接続している間に、PCとハンディ間でデータの受け渡し処理を行います。

なので、例えばPC→ハンディに指示データを渡して接続を切った後、PCで指示データを変更した場合は、変更情報はハンディに反映されず作業者に別途指示する必要があります。このリアルタイム性のなさが有線方式の欠点なのですが、リアルタイム性を必要としない場面(出先で伝票登録して帰社後に売上データとして取り込むなど)では十分運用が可能です。後述する無線接続ではアクセスポイント設置などの付随費用もかかるため、こちらのほうが初期費用も安く導入しやすいといえます。

無線LAN(社内wifi)方式

無線LAN方式は、有線式が弱点とするリアルタイム性を克服します。上記の例で言えば、ハンディは常に最新の指示データを参照するようになるため、作業者はどこにいても最新情報をもとに作業を行い、読み取り/入力したデータをリアルタイムでPCに返せるようになります。これが無線式を選択するメリットです。

ハンディを無線接続する場合、無線LAN(電波の送受信)に対応した端末を選ぶ必要があるほか、電波の発信基地を設置しなければなりません。この発信基地のことを「アクセスポイント」といい、利用環境の広さやレイアウトなどによっては複数設置します。場合によってはLANケーブルの延伸工事も必要になったりと、端末費用以外にコストがかかりがちなところに注意が必要です。

なお、屋外で使用する場合は、無線LANの代わりに公衆回線を使用するタイプもあります。

【補足】Bluetooth接続(無線方式)

無線通信手法の1つに、Bluetooth接続があげられます。無線LAN通信に対応するハンディは、たいていBluetooth接続にも対応しています。

Bluetooth接続を行う場面ですが、よくあるのはラベルプリンタや伝票発行機との通信です。出先など無線LANの電波エリア外にいるときに、機器同士でデータを受け渡しするのに利用されます。有線通信タイプの端末でも、Bluetooth対応モデルが用意されていることもあるため、そういった用途に応じて機種選定すると良いでしょう。

ポイント④防水や外気温などの耐環境性

ハンディターミナルはモノとしての性質上、他の精密機器と比べて堅牢なつくりをしており、2~3mの高さから落としてビクともしない端末は珍しくありません。とはいえ、機械はいつかは壊れるものです。特に特殊な環境下でハンディを使用する場合は、耐環境性が高いものを選ぶことが、大金はたいて購入した機械をできるだけ長く使うコツになります。

例えば食品加工場など水気の多い場所なら、仕様書の防水性能欄をチェックしておきましょう。電子機器などの防水や防塵に関する程度は、JIS規格の「IP保護等級」という形で表現されています(IP64など)。外気がマイナスとなる冷凍庫内や、逆に高温になりがちな車内に一時持ち出しする場合などでは、使用可能温度もチェックすべき項目です。

ポイント⑤ソフトウェアの開発コスト

最後は、選ぶ機種によって、ハンディで動かすソフトウェア(検品システムや商品管理システムなど)の開発費用が異なるというお話です。わかりやすいのは、機能豊富な上位機種を選ぶケースでしょう。出来ることが増えるため機能数も多くなり、開発費も比例して上昇します。しかし開発コストに影響を与えるのはそれだけではありません。

少し技術的な話になってしまいますが、ハンディにも、パソコンやスマホと同じようにOSが予めインストールされています。それはハンディメーカーが開発した専用OSだったり、マイクロソフトのWindowsだったりします。近年はAndroidも増えてきました。

ソフトウェアというのはOSを意識して作る必要があるため、例えば「Windowsタイプは開発したことはあるけどAndroidタイプの開発経験はまだない」ベンダーの場合、Android端末を選ぶと導入コストが割高になる(開発効率が落ちる)可能性があるということです。ユーザー企業にとってOSの種類は盲点ですが、選定の際は頭の片隅に入れておくと良いでしょう。

OSとソフトウェアの関係については別の記事で詳しく解説しています。

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