伝票発行を自動化する方法~伝票発行システムの選び方も解説

食肉業界向け

「伝票発行を自動化したい」納品書の作成には、思った以上に時間と手間がかかります。注文メモや商品情報(食肉業界であれば個体識別番号や単品ごとの重量など)を関係部署に確認しに行ったり、受け取ったメモ内容の目視転記や備考記入などを行う必要があるからです。本記事では伝票発行を効率化したい事業者さま向けに、伝票発行を自動化する方法と、知っておきたい伝票発行システムの選び方について解説いたします。

伝票発行の自動化レベル

伝票発行の自動化レベルは、いくつかの段階に分かれます。自社の業務都合を鑑みどこまでの自動化を目指すのか、ツール選択の前提条件として予め整理しておく必要があります。ここでは解説のために、自動化レベルを「手書きをなくす」「伝票入力の負荷を減らす」「伝票運用をなくす」の3つに大別しました。

レベル1.手書きをなくす

伝票を手書きしている事業者さまは、まだまだ少なくありません。前もって伝票発行する時間が取れない、ルート営業などで相対販売による売上が発生するといったケースでは、納品先で伝票発行する必要があるのです。特に食肉業界では、個体識別番号や重量、カット規格など伝票への記載項目が多様で、時間がかかるだけでなく記入ミスも起こりやすくなります。これを抑止しているのは作業者の熟練や集中力で、いわゆる属人化している状態です。このようなケースでは、まず「手書きをなくして作業ムラを減らす意味での自動化」を考えることになります。

手書きをなくすための主な自動化
・ハンディターミナルと持ち運び式(車載型や携帯型)プリンタを使って、出先でも自動で伝票発行できるようにする
・事前に事務所PC(システム)から伝票発行できるよう、業務プロセスを見直す

レベル2.伝票入力の負荷を減らす

システムから伝票出力する場合、手書きによる人的負担やミス排除には成功しているものの、代わりに伝票入力する作業が発生します。商品情報や請求情報などの細かな販売情報を大量にシステム登録していく作業なので、人的負担やエラーリスクは無くなっていません。このような場合は「伝票入力を効率化するための自動化」、つまり作業負担・作業時間・作業ミスを減らし、生産性をあげていく方策を考えます。あらゆる事業者で、最も取り組むことの多い課題です。

伝票入力の負荷を減らすための主な自動化
・過去の取引履歴データ活用や機械学習を使って、入力作業を省く機能を設ける

・上位システム(受発注システムや生産管理システムなど)とのデータ連携を構築し、手入力を減らす
・商品バーコードとハンディターミナルを使って、商品情報等をスキャン入力する
・取引先と共同で利用する受発注システム(自社システムや月額制プラットフォームサービス)を構築し、取引先が入力した注文データを活用することで手入力を減らす

レベル3.伝票運用をなくす

伝票発行そのものをなくす方法もあります。事前出荷通知(ASNデータ)とSCMラベルを使って、電子データのみで出荷・納品情報の伝達や受領確認を行うやり方です。これは、メーカー→卸業者の物流センター→小売店舗のようなチェーンストア物流など、事業者を跨いだ物流の全体効率を上げるために生まれた手法です。自社の一存だけで進めることはできず、ここまでの2つの比べると極端に難易度が高いのは否めませんが、チェーンや大規模小売と取引がある事業者の場合、今後導入が検討される可能性はあるでしょう。

伝票運用をなくすための主な自動化
・伝票レス(検品レス)の導入 ≫別記事にて詳しく解説しています

伝票発行システムの選び方

伝票発行システムを選ぶ際は、「どんな伝票を発行するのか」「どんな項目を表示しないといけないのか」を考慮する必要があります。これによりツールの選択肢が変わってくるからです。

どんな伝票を発行するのか

ほとんどの事業者では、納品書として「統一伝票」「取引先指定伝票」「自社伝票」を使い分けているかと思います。それぞれどれくらいの割合で使用しているのかを見極め、作業ムダや負担が最も少ないツールを選ぶ必要があります。

  • 統一伝票
    チェーンストア統一伝票(CS伝票)や百貨店統一伝票など。CS伝票は様々な業種で利用されているため、一般的な伝票発行システムは標準対応している。複写式なので特殊なプリンタ(ドットインパクトプリンタ)が必要。
  • 取引先指定伝票
    取引先が指定する伝票を使って納品を行う。伝票フォーマットは取引先ごとに異なるため、取引の始まりや取引先が伝票フォーマットを変更する際に、印字項目やレイアウトを調整しなければならない。この作業を内製化したい場合は、フォーマット作成機能のある伝票発行パッケージソフトを利用すると良い。基本的に複写式なので、ドットインパクトプリンタが必要。
  • 自社伝票(汎用伝票)
    市販のコクヨやヒサゴ伝票を購入し、自社が設計したフォーマットで納品書を印字する。複合機(レーザプリンタ)で出力できるものが多いため、余計な機器購入がなく改善にも取り組みやすい。コクヨやヒサゴ伝票のほか、用途に合わせて感熱式のレシート伝票が採用できるなど、ソフト面やハード面で融通が効く(レシート伝票の場合は、対応するレシートプリンタが必要)。

どんな項目を表示しないといけないのか

売上伝票仕様はある程度の一貫したルールはあるものの、各業界で慣例的に表示する独自項目(食肉業界であれば個体識別番号や単品ごとの重量など)も存在します。そのような項目を伝票に印刷するには、当然システム画面にもその入力項目が必要です。

汎用的な伝票発行システムを導入すると、データベースのカスタマイズやレイアウト調整など、思わぬところで追加料金がかかってしまうことがあります。業界特化型の伝票発行システムだと心配無用でしょうが、市販されている伝票発行システムのバリエーションはあまり多くなく、日ごろ自社が使っている伝票にどれくらいの独自性があるのかは注意が必要です。

伝票発行システムの種類とメリット・デメリット

ここまでで、伝票発行システムを選ぶために必要な前提条件を整理できたはずです。最後に、伝票発行システムの種類と、それぞれのメリット・デメリットについて解説いたします。

基幹システム組み込み型(機能改修)

通常、基幹システムには、売上や請求管理と連動する形で伝票発行機能も組み込まれています。この機能が不十分だったり、新しい伝票処理プロセスやルールが加わったりすると、システムベンダーに依頼して機能改修するのです。しかし、機能改修があまり合理的でないこともあります(多額の費用がかかるなど)。そこで初めて、基幹システムと接続する「伝票発行システム」を別途検討することになります。

≪メリット≫
・独自性の高い項目でも基幹システム側ですべて設計済みなので、前後の機能との親和性が高い
・売上データ連携のための余計な手間やコストがかからない
・統一伝票や汎用伝票がメインの場合は、作業や費用のムダが最も少ない

≪デメリット≫
・取引先指定伝票の取り扱いが増えると、その都度システム改修(コスト)が発生する
・ハンディターミナルを使った伝票発行などは、システムベンダーのカバー範囲外となることがある

伝票発行パッケージソフト

基幹システムの伝票発行機能では不十分な場合に、伝票発行業務に特化した専用パッケージソフトを利用します。たとえば「伝票の一括出力や出力プリンタの自動切換を行いたいが、既存システムでは対応していない」といったケースで有効です。そのほか、出力伝票のレイアウト作成を自社でできる(伝票フォーマット追加を内製化できる)点も、このタイプの大きな特徴になります。

≪メリット≫
・伝票発行業務に特化したユーザビリティが確保されている
・伝票フィーマット作成を内製化できるので、取引先指定伝票の取り扱いが増えても追加コストがかからない

≪デメリット≫
・伝票データは基幹システムから受け取って使うケースが多く、データ連携の手間やインターフェース構築費用が発生する
・情報システム部門がない事業者では、慣れない人がフォーマット作成や表示項目のカスタマイズを行わなければならないため作業コストがかさむ恐れがある

自社専用の伝票発行システム

自社業務にフィットする伝票発行システムの構築をベンダーに依頼し、導入します。主に基幹システム側でカバーしきれない領域で利用することが多く、納品先での伝票発行のほか、システム利用環境がない出先の事務所などで独自に売上システムを構築して伝票発行するようなケースもあります。一般的な伝票発行システムでは伝票データは基幹システムから受け取りますが、こちらは専用開発なので、ハンディターミナルなどによる売上入力機能まで設けるなど、業務合理化に都合よく構築できるのが大きな特徴です。

≪メリット≫
・要件に沿って構築されるのでムダがなく、自社業務との親和性が高い
・基幹システムや使用する受発注クラウドサービスなど、外部データ連携の融通が効きやすい
・ハンディターミナルの活用など、自社の課題にあわせて自由に業務効率化を図ることができる

≪デメリット≫
・パッケージシステムに比べると、設計開発のコストがかかる
・基幹システム組み込み型に比べると、システム間データ連携の手間やコストがかかる

モバイル伝票発行システム

さいごに

通常、伝票発行は基幹システムの売上機能のなかに包括されているため、伝票発行システムを探している事業者さまは現在の伝票発行に何らかの課題を感じていらっしゃるはずです。伝票発行は売上や出荷機能から連続する業務であるため、事業との親和性が高いものを選ぶ必要があります。伝票発行業務を改善するだけで、生産性が大きく改善された事例もあります。ぜひ本コラムを皆さまの業務改善のお役に立てて頂けたらと思います。

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