「棚卸をして初めて在庫の実態が把握できる」という食肉卸業者様はまだまだ多く存在します。受発注時は、倉庫に赴いて現物在庫を確認している例も少なくありません。食肉卸の在庫管理は単純ではなく、「在庫管理を導入している同業他社は、いったいどのように運用しているのか」と気になるところでしょう。本記事ではそのような疑問にお答えすべく、食肉卸の在庫管理方法3つとその違いを解説します。
目次
食肉卸売業の在庫管理の実態
“在庫管理導入済みの食肉卸” と一言にいっても、Excelを使っている、ラベルとハンディターミナルを使っている、ハンディターミナルだけ使っている、など業務実態は事業者によって様々です。
ただ突き詰めると、在庫管理のやりかたは大きく3パターンしかありません。その3パターンとは「品番管理」「単品管理」「ロット管理」を指します。これにツールを組み合わせることで、
■ Excel台帳でロット管理している
■ 販売管理ソフトで品番管理している
■ 在庫管理システムで単品管理している
と、事業者ごとに色が出るようになります。以降では、品番/単品/ロット管理の運用の違いを解説していきます。
方法1:品番管理とは
品番管理の運用イメージ
「在庫を実際に数えないと何がいくつあるか分からない」という事業者様に、在庫管理システムを導入するとします。「何がいくつあるか」を捉えるのにまず思い浮かべるのは、商品コード別に数量を把握するやり方です。弊社食肉管理システムでは、これを「品番管理」と呼びます。
品番管理運用では、肩ロースを10箱100kg入荷し、(まったく出荷せずに)翌週にも10箱100kg入荷したとしたら、帳簿在庫では
肩ロース 20箱 200kg
として管理します。
品番管理のメリット・デメリット
品番管理では正しい在庫数を捉えるという目的は達成されますが、捉えられないものもあります。たとえば肩ロースの在庫が20箱あったとして、その情報だけでは在庫の先入れ先出しや賞味期限切迫を発見するには、倉庫担当者に「気をつけてね」と言うほかないわけです。そのほか、受注判断のために帳簿在庫で品質情報(グレードなど)まで捉えたい場合なども、結局倉庫に行って確認することになります。
品番管理が採用できる場面
逆に、古い在庫と新しい在庫(特に賞味期限)の見分け、グレードなどの細かな在庫情報の見える化が不要であれば、品番管理で良いということです。たとえば、食肉加工業者が取り扱うような包装材や調味料などがこれにあたります。
食肉製品であっても「現場で都度確認するから良し」と開き直れば、品番管理でも良いでしょう。とはいえ一般的にそのような属人化は良しとされないので、鮮度管理が必要な食肉製品の在庫管理では、次の「単品管理」か「ロット管理」を採用することが多くなります。
品番単位では在庫管理できない場合もある
商品コード別に在庫を捉える場合、在庫受入(仕入入力)時と、在庫払い出し(売上入力)時の数量差が、その商品の残在庫になるイメージです。この仕組みは、受入/払い出しで同じ商品コードを使用する前提なので、たとえば自社加工を行って売上入力時の商品コードが変わる場合などでは、残在庫が計算できません。工夫次第で実現できる可能性もあるのですが、こういったケースもやはり次の「単品管理」か「ロット管理」を採用することが多いです。
方法2:単品管理とは
単品(シリアル)管理の運用イメージ
「在庫を実際に数えないと何がいくつあるか分からない」という事業者様に、在庫管理システムを導入するとします。「何がいくつあるか」を捉えるのにまず思い浮かべるのは、商品コード別に数量を把握するやり方です。弊社食肉管理システムでは、これを「品番管理」と呼びます。
品番管理運用では、肩ロースを10箱100kg入荷し、(まったく出荷せずに)翌週にも10箱100kg入荷したとしたら、帳簿在庫では
肩ロース 1箱目(シリアルNo.1) 10.5kg、北海道産、グレード●●、賞味期限●●、個体識別番号●●
肩ロース 2箱目(シリアルNo.2) 9.8kg、北海道産、グレード●●、賞味期限●●、個体識別番号●●
として管理します。
単品管理のメリット・デメリット
上記のとおり、単品管理ではシリアルNoを特定すると、箱ごとに異なる情報(重量や個体識別番号、産地、賞味期限など)が芋づる式に紐づいてきます。在庫情報の見える化だけでなく、後続の出荷/棚卸作業で在庫ラベルをスキャンするだけになり、業務効率が大幅アップおよびミス防止されます。
ただ、基本的に在庫ラベルを使った管理方法であり、在庫する前(入荷時)に1箱ごとにラベル貼付とハンディ検品作業(1箱ごとの在庫情報を登録)することになります。基本的には部分肉ラベルをスキャンする作業ではありますが、少なくない業務負荷になるため、これがネックになり単品管理を見送るケースもあります。
単品管理が採用できる場面
保管前のラベル貼付が必要になるため、入荷時の作業環境(物量、かけられる時間と人員、バースの広さ)が、単品管理できるかどうかの分かれ目です。
ただ、国産牛に関しては製造後に貼付する商品ラベル(部分肉ラベル)が標準化されているため、そこに「シリアル番号に相当する番号」が埋め込まれていれば、わざわざ在庫ラベルを貼付しなくても部分肉ラベルを使って同じことが行えます。部分肉ラベルを出力するのは計量器システムなので、自社加工であれば、この仕組みが実現できる可能性は高いです。
方法3:ロット管理とは
ロット管理の運用イメージと採用場面
上述のとおり、単品管理は入荷時の作業環境がポイントです。たとえば1時間に何千ケースも入荷したり、作業用の一時保管スペースがほとんどなかったりすると、あまり現実的な選択肢とは言えません。また入荷した在庫100箱が全く同じ情報である場合(定貫品など)も、1箱ずつ情報管理するのは非合理的です。そういったときに「ロット管理」を採用します。
ロット管理運用では、肩ロースを10箱100kg入荷し、(まったく出荷せずに)翌週にも10箱105kg入荷したとしたら、帳簿在庫では
肩ロース ロットNo.1 10箱/総重量100kg、入荷日●●、賞味期限●●、仕入単価●●
ロットNo.2 10箱/総重量105kg、入荷日●●、賞味期限●●、仕入単価●●
として管理します。
ロット管理のメリット・デメリット
ロット管理では「このかたまり(ロットNo.1)の在庫情報は~です」と入荷登録するので、単品管理より情報登録の手間が減ります。ラベル貼付も、必ずロット別に保管できる場合に限り、代表ラベル1枚でも運用可能です。ロット単位で在庫情報を見える化しながら、入荷作業のスピードを落とさずに済むのが最大のメリットと言えます。
ただ、在庫の商品情報は1つのロットにつき1つなので、1ロット内で商品情報に違いがある場合(輸入品の賞味期限など)は、ある程度のルール決めが必要になります。どのみち不定貫品は1箱ごとに重量が異なるので、結局は出荷/棚卸作業ですべて重量登録しなければなりません。
単品管理かロット管理か
単品管理とロット管理のどちらを選択するかは、入荷の手間か、出荷・棚卸時の手間か、の選択のようにも思えます。しかし在庫管理精度は、ロット管理より単品管理のほうが間違いなく上です(単品管理は必ず1箱ずつラベルを貼るので、帳簿在庫の管理基準が高く、誰がやってもミスがない)。そのようなことを会社として目指すのであれば、人員配置を見直してでも単品管理を採用すべきでしょう。
まとめ
食肉卸の在庫管理は「品番管理」「単品管理」「ロット管理」の3方式に大別されます。品番管理は数量把握に特化し、単品管理は箱ごとに詳細情報を紐づけて精度が最も高い方法です。ロット管理は入荷単位で情報をまとめ、作業負荷を抑えつつ鮮度管理も可能です。現場環境や求める精度に応じて最適な方式を選ぶことが重要です。














