IT点呼の導入ルール|法令違反しないために必要な準備とは?

運送業界向け

「点呼業務の負担が大きい」「運行管理者の確保に苦労している」。点呼は法令で定められた義務とはいえ、その業務負担は少なくありません。これを合理化する方法としてIT点呼を導入する運送事業者も増えてきましたが、無条件で導入できるものでもなく、安全運行を守るための厳格なルールが定められています。この記事では、IT点呼を検討する担当者さま向けに、知っておきたいIT点呼の導入ルールと導入に必要な準備について解説します。

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IT点呼とは

IT点呼は例外許可された点呼方法

国土交通省が定める法令「貨物自動車運送事業輸送安全規則」内において、点呼業務は原則対面とされていますが、続けて以下のように記述されています。

輸送の安全の確保に関する取組が優良であると認められる営業所において、貨物自動車運送事業者が点呼を行う場合にあっては、当該貨物自動車運送事業者は、対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定めた機器による点呼を行うことができる。
貨物自動車運送事業輸送安全規則(施行日:令和三年二月一日)より引用

「対面による点呼と同等の効果を有するもの」がIT点呼です。web会議と同じように、ドライバーと点呼執行者が画面上で互いの姿を確認しながら会話することで、疑似対面による点呼を行います。これにより遠隔点呼が可能となるのです。

電話点呼との違い

遠隔点呼という点では、似たようなものに電話点呼があります。法令内でも「運行上やむを得ない場合は電話(中略)により点呼を行い(後略)」とある通り、正式に認められた点呼方法です。ただし電話点呼とIT点呼は、運用ルール面で明確に違いがあります。

電話点呼の場合、点呼執行者は当該車輌が属する営業所の運行管理者(または補助者)でなくてはなりません。点呼時間帯ごとに点呼人員を営業所別に確保しておかなければならないのです。これがIT点呼になると、ある営業所の運行管理者が他営業所車輌の点呼を行えるようになります。人員配置の融通がきくようになる、ということです。

IT点呼のメリット

点呼執行者を事業所ごと(あるいは日中・夜間の時間帯ごと)に確保しないで済むのは、IT点呼の最大のメリットと言ってよいでしょう。またIT点呼システムを使うことで点呼簿が自動的にデジタル化されるため、乗務前・乗務後に行っていた手作業での点呼簿記入がなくなります。アルコールチェッカーや基幹システムとデータ連携すれば、アルコール検知結果や車両番号・行先なども入力不要になり、点呼業務を時短できることも大きなメリットです。

IT点呼の法令ルール

IT点呼はもともと「ある条件下においては対面でないことを特別に許可する」という性質なので、法令で厳格にルールが規制されています。よく知らずに導入し、監査の際に指摘されて点呼違反となるケースもあります。導入を検討する前に、是非ともそのルールを知っておきたいところです。

IT点呼が認められる営業所

輸送安全規則にある「輸送の安全の確保に関する取組が優良であると認められる営業所」とは、原則、Gマーク認定された営業所を指します。IT点呼は営業所を跨いだ点呼が可能ですが、点呼を行う側と受ける側ともにGマーク認定が必要です。ただし、Gマーク取得していなくても、下記の条件を満たせばIT点呼を行ってよい、とされています。

  1. 開設されてから3年を経過している
  2. 過去3年間、第一当事者として自動車事故報告規則第2条に規定する事故を発生させていない
  3. 過去3年間、点呼の違反に係る行政処分又は警告を受けていない
  4. 地方貨物自動車運送適正化事業実施機関が行った直近の巡回指導において、総合評価が規定以上であること

IT点呼が認められる範囲と時間帯

IT点呼が認められる範囲、つまり誰と誰の間なら実施OKかというルールは、Gマーク認定の有無で異なります。Gマーク認定を受けていなくてもIT点呼は導入できますが、Gマーク認定を受けている場合に比べると、やや制限があるのは否めません。IT点呼による事業効果を最大化させるには、やはりGマーク認定を受けているほうが有利かと思います。

≪IT点呼が認められる範囲≫
Gマークあり:営業所間/営業所と車庫間/車庫と車庫間
Gマークなし:営業所と当該営業所の車庫間/営業所の車庫と当該営業所の他の車庫間

≪IT点呼が認められる時間帯≫
1営業日のうちに連続する16時間以内(ただし、同一営業所内の車庫間は制限なし)

点呼執行者の規定

点呼執行者の条件は、IT点呼も対面点呼も同じです。運行管理者か運行管理補助者のどちらかが点呼を行いますが、ひと月に行った点呼総回数のうち、1/3は運行管理者にて執行されていなければなりません。また他営業所のIT点呼を実施した場合、点呼実施後、翌営業日以内に点呼記録内容を当該車輌が属する営業所の運行管理者(または補助者)に通知すること、と定められています。

事前の届け出義務

繰り返しますがIT点呼は例外規定なので、事前の申請が必要です。具体的には、IT点呼開始予定日の原則10日前までに、営業所を管轄する運輸支局長に対してIT点呼を行う旨の報告書を提出します。営業所の所在地によって管轄支局が複数ある場合、それぞれのエリアで報告書を提出しなければならない点に注意が必要です。

なお、報告書フォーマットは各運輸支局サイトからダウンロードすることができます。報告書面のほかにも、IT機器の性能がわかる書面(パンフレット等)の提出が求められます。

参考リンク(外部サイトに飛びます):関東運輸局/東京運輸支局サイト「IT点呼に係る報告書(新規)」

IT点呼の導入に必要なもの

IT点呼ソフト

点呼を執行する側と点呼を受ける側の両方で、IT点呼ソフトをインストールして利用します。画面越しに点呼するだけでなく、点呼簿もソフトウェア内で記録・管理するようになります。アルコールチェッカーなどの外部機器とデータ連携すれば、記録作業を省力化できるのが特徴です。クラウド型ソフトであれば、インストール不要でインターネット環境だけで利用することができます。

webカメラ付きPC(またはスマートフォン)

IT点呼は疑似対面なので、IT点呼ソフトとあわせてカメラ付きのPC端末が必要です。PCにカメラが付いていない場合、USBで外付けするタイプのwebカメラを購入しなければなりません。ドライバーが営業所や車庫におらず遠隔地にいる状態で点呼する場合は、専用アプリをインストールしたスマートフォンを使って行います。(遠隔点呼に対応したIT点呼ソフトが必要)

周辺機器

IT点呼ソフトとデータ連携可能なアルコールチェッカーやIC免許書リーダーをあわせて使えば、検知結果が自動で点呼記録に登録されるため手間が省けて便利です。営業所や車庫ではない場所で遠隔点呼する場合は、携帯型や車載型のアルコールチェッカーや免許書リーダーが必要になります。電話点呼で既にこれらの機器を導入している場合は、継続して使えることもあるので一度確認すると良いでしょう。

IT点呼の導入には補助金が利用できる

IT点呼は、国土交通省が行う補助金制度「過労運転防止のための先進的な取り組みに対する支援」の対象となっています。国土交通大臣が認定したIT点呼機器の取得に対して補助を受けることができ、毎年募集が行われています。申請受付期間のほかに補助事業期間(機器購入~取付け・支払い完了まで)が定められているので、ベンダーと相談し、計画的に導入することをお勧めします。

※本補助金に関する公式サイト(外部サイトが開きます):国土交通省 事故防止対策支援推進事業(申請受付期間は2022年7月22日~11月30日

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