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SL大学SYSTEMLIFE-UNIVERSITY

SL大学|AGV導入の注意点をケーススタディ

SL大学2024.4.24

こんにちは、システムライフ(SL)大学です。SL大学とは2022年に立ち上がった社内教育機関で、毎月勉強会を開催しています。その一部を学習ノートとして公開いたします。

システムライフ大学

AGV導入ではどのようなことに注意すれば良いのか、事例をもとに学習します。

AGV導入の事例概要

物流センター新設にあたり、DCのピッキングエリアにAGV(棚搬送ロボット)を新規導入した事例。倉庫管理は全社共通のWMSを使用し、当該センター独自の機能として「WMS出荷指示をもとにAGVに指示を出す(目標の棚を作業ステーションに呼ぶ)」「ピックアップ後にAGVに指示を出して棚をもとの位置に戻し、ピッキング実績をWMSに返す」という機能改修を行いました。

ピッキング作業者は庫内を動き回る必要がないため、出荷業務の省力化・効率化には繋がったものの、当初想定していなかった問題も起きました。そこで今回は、AGV導入設計のプロセス・注意点などをケーススタディします。

AGV導入設計のプロセスと注意点

どんなAGVを導入するか

この事例では、庫内設計の段階でバラ出荷エリアとリザーブエリア(パレット保管)を分けることが決まっており、バラ出荷エリアに棚搬送型(ロボットが保管ラックの下に潜り込み、ラックごと持ち上げて運ぶタイプ)のAGVを導入することでピッキング効率アップを図ることとしました。AGVの自動走行および搬送棚選択のガイドは、QRコード方式が採用されました。

補足:QRコード方式では、保管ラックの底面ウラ(ラック搬送時にAGVが接触する部分)と、当該エリアの床面全体に等間隔でQRコードシールを貼付し、AGV本体に内蔵されたスキャナでQRコードを読み取ることで棚や走行ルートの指示・確認を行う。

AGVをどの広さで何台導入するか

AGVの導入台数は、作業ステーションの数×各ステーションに1度に集まる台数(3~4台)+庫内稼働台数で算出されました。またAGVはバッテリー駆動で常時Wi-Fi通信を行うため、対象エリアが広すぎると搬送途中に物理的トラブルでAGVが止まってしまうリスクがあります。今回の事例では、対象エリアを絞っていたためそのようなトラブルは起きませんでした。

注意点:AGVのバッテリー駆動時間は要チェック。またシステムとAGV間の無線通信が途切れないよう、アクセスポイントの設置は十分であるか、庫内でWi-Fi電波が弱くなるポイントが無いかなどを確認するための実機テストも必要。あとは、エリアが広すぎると、入庫/出庫時の指示開始~1台目到着の待ち時間が長くなることにも注意(2台目以降は待機できるようになる)。

AGV倉庫のロケーション管理をどうするか

AGV倉庫では人が商品探しする必要がないため、格納効率を上げることを最優先としてフリーロケーション管理を採用。3~4段の保管ラックに数種類の品目の段ボールケースを保管し、それらのバラ残数でロケーションの空きを把握するシステムとしました。しかし実際に運用が始まると、入庫(リザーブ倉庫からAGV倉庫への補充)担当者がラックのどの位置にどの商品を格納するかを都度考え、整理する手間が発生するようになりました。

注意点:入庫ロケーション(+入庫数量)を決めるロジックが甘いと、同一商品でロケーションの分割などが発生し、フリーロケ管理のデメリット面が足枷となってくる。あと、ラックの前面/背面を別ロケとして使用する場合は、前面ロケ/背面ロケを同じタイミングで呼び出したとしても都度倉庫に戻る必要があるので注意(AGVを回転させるのは危険なので基本的にNG)。

AGV倉庫にどの商品を保管するか

この事例では、AGV倉庫の在庫が基準を下回ると、リザーブ倉庫からの補充指示が行われます。少量のバラ出荷であればそのサイクルで問題ありませんが、実際に運用が始まるとAGV倉庫からほぼ1箱丸ごと出荷するようなケースも見受けられ、「緊急補充」が多発するようになりました。またその際の手数(AGV倉庫への入庫処理に必要なシステム操作)の多さも、運用面の問題となりました。

注意点:AGV倉庫の保管対象品は通常、商品分類などで制御されるが、出荷単位まで考慮してより精緻な属性分けをする必要があるかもしれない。補充点の設定を出荷量に合わせて調整するなどして、定期補充をきちんと機能させるアプローチも重要。

WMS~AGV連携の仕様をどうするか

この事例では、WMS(出荷指示データを出す)→WCS(QRコードの地点情報管理等を行う)→ RCS(棚同士がぶつからないように走行ルートの制御等を行う)→ AGVの順に、CSVデータのやり取りを行う仕様としました。

注意点:CSV形式なので、データ取込を行う際に2~3秒ほどの時間を要することもある。機械とのやり取りでタイムラグが発生するパターンの時は特に配慮が必要で、このような場合はやはりAPI連携が望ましい。


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