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2025.12.04

物流業界向け

SL大学|庫内業務の生産性とKPI

こんにちは、システムライフ(SL)大学です。SL大学とは2022年に立ち上がった社内教育機関で、毎月勉強会を開催しています。その一部を学習ノートとして公開いたします。

システムライフ大学

管理基準が高い物流倉庫ではKPI管理をすることが多くなるため、基礎知識を纏めます。

人時生産性のKPI管理

人時生産性とは何か

人時生産性とは、「作業者1人が1時間でどれだけ作業できているか」を指します。商品をDASで仕分ける作業を想像すると、作業効率がいい人はどんどん仕分けを終わらせるイメージです。この実態を客観的に捉えて評価するために、下記の計算式で人時生産性を算出し、目標値や達成率の管理=KPI管理を行います。

処理ケース数÷投入人時

ある作業者が2時間で100ケース捌いているのであれば、100ケース÷2時間で人時生産性は50ケース(1時間で50ケース処理するペース)です。庫内業務は仕分けのほかにも格納作業/ピッキング/棚卸など色々あるので、作業フェーズ単位で人時生産性のKPIを設定します。

KPIによる予実チェックで、問題を把握する

KPI管理の実務では、仕分け作業のKPI(目標値)を「人時生産性:50ケース」などと設定し、物流システムのデータを使って実績集計と目標達成状況のチェックを行います(作業者別や仕分けレーン別など)。このKPIに対して実績が40ケースだった場合、管理者は何らかの改善をして目標達成を目指さなければなりません。「業務改善の余地がある」という仮説は、KPI管理をしているからこそ得られた気づきと言えます。

KPI管理の有効性がわかる別の例を挙げましょう。たとえばピッキングカートを使ったピッキングでは、途中でコンテナが満杯になると空コンテナを取りに戻る必要がありますが、作業者にしてみれば当然のこととして行っています。だからこそ現場からは改善ポイントとして挙がってこないことも多いのですが、KPIという客観的データがあれば問題が把握できるようになります。

人時生産性を改善する方法とは

問題(人時生産性が悪いポイント)があれば、改善しなければなりません。いくつか改善方法を挙げておきます。

■タッチ数を減らす
導線や仕分け方法などを見直して、1つの場所・1つのコンテナへの接触回数を最小限にする
■システム操作数を減らす(1秒を減らす)
ハンディ検品時の確定操作を省略(連続入力処理)する、作業人数に合わせた自動改ページで指示書のコピー作業を省略するなど
■移動距離を減らす(1歩を減らす)
指示書にロケーションを表示して迷わせない、ピッキングリストの表示順をロケーション導線通りにする、DAS仕分けでは2レーン対面式で仕分け順序を設定するなど

人時生産性をKPI管理する際の注意点

上述したとおり、人時生産性のKPI設定は、格納/ピッキング/棚卸などの作業フェーズ単位で行います。が、物流システムのデータを使って実績集計を行う=物流システムに作業記録が必要ということです。たとえば、検品の作業時間を取るためにハンディで作業開始/終了の合図登録を行うなど(※ただしそのようなWMSはあまりないので、場合によってはピッキングリストのバーコードを読んで最後の検品登録が終わるまでを作業時間と見なしたりする)。

作業フェーズごとに細かくKPIを設けるのは良いですが、予実チェックするには作業実績の記録が不可欠なので、その手間と得られる効果を天秤にかけたうえで何をKPI管理するかを判断することになります。

人時生産性のほかに、よく使われる庫内業務のKPI

保管効率

倉庫というのは、そこに存在するだけでコストが発生します(賃料や電気代など)。だからこそ「効率的にモノを置けているか=保管効率」を把握するのですが、保管効率100%を目指すかどうかは倉庫業態によります。営業倉庫の場合だと、保管料を請求できる立場なので100%に近いほど儲かることになり、自動倉庫の導入で上部空間のデッドスペースを埋めるといった保管効率を上げる取り組みが活発化しています。事業会社の自社倉庫の場合は、在庫を大量に抱えると作業効率やキャッシュフロー低下を招いたりするため、保管効率が高い状態が必ずしも良いとは限りません。(※倉庫は基本的にピーク期の物量を前提に作ってある)

誤出荷率

誤出荷率は、倉庫現場でおそらく一番取り入れられているKPIです。処理能力というよりは出荷作業品質を測るための指標ですが、誤出荷や出荷遅延などは「物流事故」として取り扱われることも多く、そういった場合、事故記録を取って対策する必要があります(遅延などを含めたクレーム発生率をKPIとすることもある)。また誤出荷まで至らずとも、ピッキングの取り間違い(検品エラー回数)を集計して作業品質を計測するパターンも見かけます。


≫関連ノート:物流KPIってどんなやつ?
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