運送業界において、売上管理に汎用的な販売管理ソフトを使用するケースは珍しくありません。請求や入金管理はどの業界も大差ないため業務事態は進められますが、一方で「業務のムダ」や「利益の見えにくさ」を生む原因にもなり得ます。この記事では、運送業における売上管理の本質と、業務全体を一気通貫で効率化する方法を、わかりやすく解説します。
目次
業務改善のターゲットを定める
運送業は「モノを仕入れて売る」という卸売ビジネスとは異なり、「輸配送サービスを実施することで売上があがる」ことから、売上管理において以下のような問題が発生しやすくなります。
・売上が確定するまでの業務プロセスが多い(受注~配車計画~運行実績)
・このため売上が請求ベースでしか管理できず、Excelや運行管理ソフトとの二重管理になる
・売上に対する原価が一般的な経費項目にあたり、原価と損益が把握しづらい
このように運送業の売上管理では業務フローが分断されているため、業務非効率を招いたり損益管理が困難になったりするのです。
運送業向け販売管理システムで実現する、一気通貫の売上管理
一気通貫の売上管理とは
運送業に特化した販売管理システムを導入することで、以下のような業務連携が可能になります。
業務内容 | 効 果 | |
受注 | 顧客からの依頼を登録 | 配車計画の起点を一元化 |
配車 | 車輌・ドライバーを割り当て | 属人化の排除、ミス削減 |
実績(日報) | 運行完了後の実績を記録 | 売上・コストの自動集計 |
売上・請求 | 実績データから売上を自動生成 | 請求漏れ防止、スピード向上 |
このように「受注→配車→実績→売上・請求」までを一元管理することで、業務効率化と損益の可視化が実現されます。とはいえ、一気通貫型システムをやみくもに導入するのはお勧めしません。大切なのは、「どこからどこまでを一気通貫で管理するか(または管理できるか)」の見極めです。
一気通貫型システムを選ぶポイント2つ
一元管理のポイントは、2つ挙げられます。①システム運用を受注から始める点と、②実績管理では経費管理を含める点です。システム導入の目的に応じて、①②の両方を採用するのか、どちらか片方を採用するのか、などを検討していきます。以下、一元管理システムの構築実例です。
収支管理を強化したい:日報入力を基点に、仕入販売管理+経費入力で収支管理を実現
収支管理と配車管理を強化したい:受注・配車入力を基点に日報~売上管理に繫げる
請求処理を効率化・配車管理を強化したい:受注・配車入力を基点に、仕入販売管理に繋げて実現
ポイント①システム運用を受注から始めるメリット
受注入力からスタートすることで、配車作業をシステムで行えるようになります。これにより配車ボードがシステム上で可視化されるほか、下記のようなメリットもあります。
・時間帯ごとの空き車輌や位置が画面上ですぐに把握できるため、配車業務が効率化される
・Excelやホワイトボード形式などに比べて、配車漏れなどのミスが減る
・配車データをもとに、配送指示書や傭車への依頼書、車番連絡表などを自動作成できる
ここで問題になるのが、「受注入力する時間的・人数的余裕があるか」です。たとえばスポット配送を主軸事業としている場合、受注件数そのものが多いため入力が追いつかないことも考えられます。こういったケースでは、Web受注を取り入れたり受注入力機能を工夫したりして手間を削減する方法もありますが、割り切ってシステム運用を実績(日報入力)スタートとするのも間違った選択ではありません。代わりに損益管理を改善することで、導入効果を出すことが可能です。
ポイント②実績管理において経費管理を含めるメリット
運送業における売上管理で最も重要視されるのは、「輸配送実績をもとにした損益管理」かと思います。運送業向けシステムでは、以下のようなコスト情報を実績とともに記録できます。
・高速道路料金
・燃料費(燃料単価 × 走行距離)
・人件費(運行手当や深夜手当など)
・傭車費、外注費
・車輛経費(リース料やメンテナンス費用など)
これにより配送1件ごとの「売上 − コスト = 利益」が自動算出され、車輌単位・案件単位・顧客単位での損益管理が可能です。ポイント①の受注~配車まで一元管理できる場合、配車情報をもとに傭車費や人件費を自動算出できるため、業務効率化の効果が最大になります。
運送業向け売上管理システムの5つの機能
運送業の売上管理を最大限に効率化するには、以下の機能を備えたシステムが理想です。これらを統合することで、リアルタイムな売上・原価・利益の可視化が可能になります。
売上/請求管理 | 運賃体系や発着地別の売上に対応 |
傭車/支払管理 | 傭車費や外注費を一元管理 |
受注/配車管理 | 受注情報から配車指示を自動生成 |
運転日報管理 | 運行経費を一元管理 |
車輌/乗務員管理 | 車輛経費や人件費を一元管理 |
売上/請求管理
一般的な販売管理システムの「売上管理」と同じです。売上入力(日報入力)データをもとに請求書を発行し、売掛金を管理します(売掛金元帳や入金入力など)。日報入力の前段階として受注/配車機能を設けるとさらに効果的です(上述したポイント①)。受注や売上データから「運賃確認書」などを出力したりします。
傭車/支払管理
一般的な販売管理システムの「仕入管理」と同じです。仕入入力(傭車入力)データをもとに買掛金を管理します(買掛金元帳や支払入力など)。売上管理と同じく、受注/配車機能からスタートすることで傭車依頼からシステム化することもできます。傭車データから「支払通知書」などを出力したりします。
受注/配車管理
システムに受注データを登録することで、配車入力や配車結果の表示(配車ボードなど)を行えるようになります。後続業務である売上入力や傭車入力は、受注・配車データを呼び出して確定するだけの運用も場合によっては可能です。「配送指示書/依頼書」や「車番連絡表」などを出力したりします。
運転日報管理
日報(運行実績)入力はいわゆる「売上入力」にあたりますが、ここで高速道路や燃料代、運行手当などの情報を一緒に登録することで、運行経費が一元管理できるようになります。運行手当は配車時点で自動計算したり、燃料代はデジタコから走行距離データを受け取って自動計算するなどして、日報入力をある程度省力化することも可能です。
ここで登録された運行経費は、車輌原価管理に繫げます。
車輌/乗務員管理
車輌自体にかかる経費(車輌の点検・修理費など)を、車番ごとに登録します。経費入力だけでなく、いわゆる「車輌管理」のように整備記録や車検管理まで一気通貫で行うことも可能です。
また、人件費管理を行うために、乗務員別給与や1運行あたりの標準人件費などをマスタ管理します。一般的な「乗務員管理」では乗務員の稼働時間や健康状態などの管理を行いますが、ここではあくまで経費管理に留めておくのが無難です(システム間連携と運用が煩雑化するため)。
ここで登録された車輌自体の経費や人件費は、車輌原価管理に繋げます。
まとめ:運送業の売上管理は “つながり” がカギ
運送業において売上管理を効率化するには、単なる請求処理だけでなく、受注・配車から売上/傭車実績管理、さらに運行経費や人件費までを一元管理することがポイントです。この業務間の繋がりが重視された運送業向けの販売管理システムを導入することで、
・現場の手間を削減
・経営に必要な数字をリアルタイムで把握
・車輌別原価/損益の可視化と改善
が可能になります。いま現在、汎用ソフトをお使いの場合は全体の業務改善につながるため、ぜひ一度ご検討されることをお勧めします。