【棚卸の効率化】基本の手順とデジタル化の方法

物流業界向け

棚卸は原材料や商品在庫を抱える企業にとって不可欠な作業です。作業時間が長くなると疲れとともにミスが増えやすくなり、実棚の精度も落ちていきます。そして在庫差異が発生すれば、その原因を突き止めるためにまた時間と人手を割かなくてはなりません。棚卸を迅速に、正確に終わらせる効率的な方法はないのでしょうか?

今回は棚卸を効率化する手順と、さらなる効率化を目指すデジタル化の方法について解説します。棚卸方法の見直しや改善にぜひお役立てください。

棚卸効率化のメリット①コストダウンや業績アップ

棚卸作業を効率化すれば、コストダウンや業績アップが見込めます。

最も大きい効果は人件費の削減です。棚卸は通常業務への影響を最小限にするため残業で行ったり、専用のスタッフを別途雇用したりするケースも珍しくありません。人員が削減できれば大きなコストダウンとなるでしょう。

また、棚卸の効率化によって現在の在庫状況を正確な数字で把握できるようになれば、過剰在庫のリスクが減り、キャッシュフロー改善や、製造・出荷のスピードアップによる業績向上も期待できます。

棚卸効率化のメリット②在庫差異の低減

棚卸作業で大きな悩みとなるのが、実在庫と帳簿やシステム上の理論在庫に差が出る「在庫差異」。その主な原因は、様々な人的ミスによるものです。

≪よくある在庫差異の原因≫
・入出荷時の伝票入力漏れ、入力ミス
・売上げ済み取り置き商品の入力漏れ・伝達ミス
・サンプルや破棄で移動した在庫の入力漏れ・伝達ミス
・棚卸作業でのカウント漏れ、重複カウント

在庫差異は日々の在庫管理のミスが原因であるパターンが多いものの、1回の作業量が多く煩雑になりやすい棚卸でも、疲れや焦りによるミスで差異が引き起されることがあります。仮に日々の在庫管理をミスなく行えたとしても、棚卸でミスをすれば在庫差異となってしまうのです。

棚卸は精度が求められる作業なので、煩雑な環境や手法を解消して、ミスと確認を繰り返す悪循環から抜け出さなければなりません。効率化にはある程度の手間やコストがかかる場合もありますが、それ以上のメリットが得られるため、この機会に手順を改めて見直してみると良いでしょう。

棚卸業務を効率化する手順

それでは、棚卸業務を効率化する方法を、手順を追って解説します。

Excelで在庫管理表を作成する

在庫管理システムを導入していない場合は、Excelソフトで在庫管理表を作成します(これが最終的に棚卸リストとなる)。

会社の規模にもよりますが、無料テンプレートやさまざまな機能を活用すれば、コストをかけず簡単に在庫管理表をデジタル化できます。自社の商品ラインナップや倉庫規模に合わせ、商品カテゴリやロケーション別に在庫データを集計出来るようにすれば、より使いやすくなるでしょう。

画像付きの棚卸リストを作成する

画像付きの棚卸リストを作成すると、物品確認の時間削減に繋がります。

棚卸リストに商品番号や品目名といったテキスト情報しか記載されていない場合、パッと見ただけではどのデータがどの商品を指すのか分かりづらく、商品特定に時間がかかりがちです。商品画像まで表示できれば、作業に不慣れな人でも実棚を取る商品がひと目で認識できるため、品目間違いのミスも減るでしょう。

確認済シールや管理欄付きラベルを活用する

棚卸の効率化には、シールやラベルの活用も効果的です。

実地棚卸では、在庫を数えて棚卸リストに情報を記入した後、(在庫差異の原因調査として)不明在庫を探し出す流れが一般的です。この在庫探索に時間がかかっている企業様も多いでしょう。在庫探索の時間を短縮するには、最初のカウント時に確認済みシールを貼る方法などが有効です。管理ラベルに数か月分のチェック欄を設けて、カウント時にレ点や○×を記載する方法もあります。

業務マニュアルを用意する

棚卸に関する業務マニュアルを作成し、社内で周知しましょう。

棚卸作業が煩雑であるほど、スタッフ個人のスキルや判断で作業を進めることが増え、人的ミスが発生しやすくなります。ミスが多い場合は、「棚卸の基礎知識」「棚卸の流れ」「在庫管理表の記載方法」「在庫差異の対処法」などを記載した業務マニュアルを準備し、共有すると良いです。ミス抑制や業務効率化はもちろん、教育にかかる時間の短縮にも繋がります。

マニュアルは都度見直す

業務マニュアルは作成したら終わりではありません。棚卸が終わったら意見共有会の開催などを行い、必要に応じて棚卸手順を見直したりマニュアルを更新していくことも重要です。意見共有会では「棚卸計画と実際の作業の差」「過去の棚卸データとの比較」 などの報告や、改善策の検討を行うと良いでしょう。

さらなる棚卸の効率化に!デジタル化の方法・ツール

さらなる棚卸の効率化を目指したい企業様は、デジタルツールやシステムを採用することをおすすめします。棚卸業務のデジタル化は、人手不足の解消や在庫の適正化にも有効です。ここでは、棚卸業務の改善に活用できる4つのデジタルツールやシステムをご紹介します。

バーコード・QRコード

在庫外装にバーコードやQRコードを印刷したラベルを貼付し、ハンディターミナルで読み込む方法です。PCにリアルタイムでデータを送信でき、入力ミスや漏れの防止はもちろん、作業のスピードアップにも繋がります。

※QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です

RFIDラベル(ICタグ)

バーコードラベルの代わりにRFIDラベル(またはタグ)をつける方法もあります。RFIDはバーコードよりも多くの情報を入れられるだけでなく、複数のラベルを一度に読み取り可能なため、たとえば商品を袋や箱にまとめて入れている状態でも、商品ごとの数量確認が簡単に行えます。人の目で個数をカウントする必要がないため、人的ミスや手間が減らせます。

在庫管理用の棚卸アプリを活用する

在庫管理用の棚卸アプリも便利です。スマホやハンディターミナルでバーコードを読み込むと、アプリが自動で台帳との照合作業をしてくれます。スマホを使えば導入コストを抑えられますが、PC用のシステムと比べて機能が限られている、情報漏洩のリスクが比較的高いなどのデメリットも指摘されているので注意が必要です。

在庫管理システム

棚卸規模が大きい場合や、全社で在庫状況を共有したい場合には、在庫管理システムの導入がおすすめです。在庫管理システムでは、ハンディターミナルで読み取った実棚情報を自動的にシステムに反映するため、棚卸状況やリアルタイム在庫が簡単に可視化されます。

棚卸だけでなく、在庫の受発注やトレーサビリティ管理にも有効なため、業務全体の効率化を実現できるのが最大のメリットです。初期に大きく導入コストがかかるものの、中長期的に見た費用対効果は高いといえるでしょう。

まとめ

規模が大きく作業が煩雑になりやすい棚卸は、日々の在庫管理よりもミスの発生頻度が高まりがちで、加えて非常に多くの人手と時間が必要です。棚卸の効率化はそういったコストや労力の低減だけでなく、キャッシュフローの改善、製造や出荷のスピードアップ、業績アップも期待できます。

棚卸業務を効率化するには、Excelで在庫管理表を作成する、実棚の証跡として確認済みシールやラベルを活用する、業務マニュアルを準備・定期的に見直すといった方法が有効です。

さらなる効率化を目指したい場合は、バーコードやRFIDラベル、在庫管理用の棚卸アプリ、在庫管理システムといったデジタルツールの活用も積極的に検討することをおすすめします。

 

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