一から理解するクラウドシステム|基本知識から会計処理まで

業界共通

クラウドシステムと聞いて、「インターネットに繋いで使うヤツでしょ?」と大まかなイメージはあるものの、詳細はよく知らないと仰る担当者さまは多いです。クラウドサービスには一部買い切りで利用する形態もあり、実は複数の選択肢があります。この記事では、クラウドシステムの基本知識から会計処理までを網羅的に解説しました。クラウドについてよく知らない方でもクラウドシステムの検討が始められるような内容になっておりますので、ぜひご一読ください。

クラウドシステムの基本知識

クラウドシステムの本質は、「インターネットに接続されたコンピュータ(サーバ)が提供するサービスを、サービス利用者がインターネット経由で(手元のPCやスマホを使って)利用すること」です。クラウドシステムという言葉が指すものは実は幅広く、実用上のサービスにはいくつかの分類があることをまず理解する必要があります。ここでは超基本から解説していきます。

【超基本】システム利用の構造

ここは超基本の話になりますので、必要のない方は読み飛ばしてください。

そもそもシステム会社が売っているパッケージとは?

皆さまが日頃、伝票入力したり帳票出力したりしているのはアプリケーションと呼ばれるものです。業務でアプリケーションを使う際は、入力したデータを仕分けし蓄積しておく場所として、データベースが必要になります。システム会社が売っているのは大抵、その2つをセットにしたものです(以降これを「パッケージシステム」と呼びます)。

ユーザーがパッケージを利用するしくみ

クラウドであるかどうかに関わらず、パッケージシステムを利用する際は、データベースは「サーバ」というシステムの提供拠点に置かれます。アプリケーションは、皆さまのパソコン端末(クライアントといいます)にインストールされています。つまりユーザーは、自分のPCでサーバのデータを参照しながらシステムを使っている、ということです。まずはこの概念をしっかり押さえておきましょう。

誰がシステムを所有するか

旧来的なサーバ自社設置型のシステムは、オンプレミス型(オンプレ型)と呼ばれます。言い換えればこれは、上述したパッケージシステムとサーバをすべて自前購入します、ということです。購入するのですから、当然自社の資産となります(会計上も資産計上する)。

これに対し、クラウドシステムというのはネット上にこれらが用意してあるので、自前購入する必要がありません。システムやサーバはクラウドサービス業者の所有であり、ユーザーは使っている間だけ利用料を払います(自社資産にはならない)。しかしなかには、「パッケージシステムは自社で所有するものがあるので、サーバやクライアントだけクラウド利用したい」といったニーズも存在します。そこで出てくるのがクラウドサービスの分類です。

クラウドサービスの分類

クラウドサービスの分類は、専門的にはSaaS(サース)、PaaS(パース)、IaaS(イアース)と呼ばれていますが、ちょっと小難しいのでわかりやすく解説します。

■SaaS(パッケージシステム一体型)
パッケージシステム+サーバ環境を、クラウド業者が準備してくれる形態。ユーザーはネットワーク環境を準備し、毎月利用料を払って使うだけ。「クラウド会計」などと銘打ってあるようなサービスがこれにあたります。

■PaaS(サーバ+開発環境提供型)
パッケージシステムはユーザー企業が用意したものを使う。これらを動かす土台のシステム(ミドルウェアと呼ばれます)とサーバ環境はクラウド業者が準備したものを使い、毎月それらの使用料を払う形態。AWS、Azureなどがこれにあたります。

■IaaS(サーバ環境提供型)
パッケージシステムとミドルウェア(上述)はユーザー企業が用意したものを使い、サーバ環境だけはクラウド業者が準備したものを使って、サーバ使用料だけを払う形態。データセンターのホスティングサービスなどがこれにあたります。

PaaSとIaaSの使い分けについては、パッケージシステムを開発・提供するベンダーがどうデータベース等を構築するかという話なので、ユーザー企業だけで検討することはなく事前知識程度で問題ありません。つまりまとめると、クラウドシステムにもパッケージシステムを買ってランニング費用を抑えるやり方と、買わずに利用料を払い続けるやり方があるということです。

クラウドシステムの使い勝手は?

このように、一言にクラウドシステムと言っても、パッケージシステムを自前で買うパターン/買わないバターンがあるため、それによって使い勝手も当然変わってきます。

パッケージシステムを自前で買う場合

自社の持ち物になるので、使い勝手や業務自体を改善するために機能カスタマイズを入れるなど、融通を利かせやすいのが特徴です。デメリットとしては、使い始める際にクラウドサーバにパッケージを導入する手間(コスト)が発生する、他のパッケージ製品への乗り換えが容易でない、などが挙げられます。そこさえ目を瞑れば、日々の業務では使い勝手が良いことのほうが多いです。

クラウド業者のパッケージシステムを使う場合

「サーバを選ぶ」「サーバにパッケージを導入する」という一連の作業が不要なので、使いたいと思ったときにすぐに利用開始できるのは大変便利です。ただしパッケージはクラウド業者のものなので、利用途中で使い勝手が悪いと感じても、我慢して使い続けることになります。簡単なカスタマイズであれば対応してくれるクラウド業者もあるので、一度相談してみるとよいでしょう。

クラウドシステムのコストは?

クラウドシステムの初期/ランニング費用についても、やはりクラウド業者が所有するパッケージを使うか、自前のパッケージを使うかによって変わってきます。

自前のパッケージシステムを使う場合

リースにしない限り初期費用は高額です。またベンダーはクラウドサーバにパッケージシステムをインストールしなければならず、インストール作業のほかにも事前のサーバ調査や打合せなどが必要で、そのぶんのコストも請求されます。ただし初期費用さえ払ってしまえば、ランニング費用はサーバ利用料だけで済むのが利点です。リースの場合はリース料もかかりますが、再リース時にはランニングが当初の1割程度に落ちるため、長期的視点で見ても価格メリットは大きいと言えます。

クラウド業者のパッケージシステムを使う場合

初期費用はごくわずか(5~10万程度で設定している業者が多い)。サーバ機能も含めて提供されるため、余計な作業コストも請求されません。機能カスタマイズを入れなければ最初の出費はその初期費用だけで、あとはユーザー数に応じて毎月利用料を支払うだけになります。スタートダッシュの身軽さが特徴ですが、反面、使い続ける限り利用料がかかり続けることに注意が必要です。再リース時に大幅減額される自前購入型に比べると、長期的なコストメリットは低い傾向にあります。

【参考】クラウドコストの見極め方とは

クラウドサービスに一定のランニングコストがかかり続けるのは然るべき理由があるからで、大切なのは、自社にとって最善の選択肢であるかどうかを見極めることです。クラウドコストの見極め方については、以下の記事もあわせて参考にしていただければと思います。

クラウドシステムを利用した場合の会計処理は?

オンプレ型システムを導入すると、パッケージシステムやサーバの取得費用は会計処理上、固定資産として計上します。クラウドシステムの場合はケースバイケースなので、解説していきます。

パッケージシステムを一括で買う場合

パッケージシステムを購入する=資産取得なので、会計処理はオンプレ型と同じです。クラウドシステムといってもサーバ環境を借りているだけですから、固定資産の取得にあたるものはすべて減価償却の対象にできます。

■資産取得価格として計上するもの
パッケージシステム費用、機能カスタマイズ費用、設定作業料

■費用計上するもの
操作指導料(導入時)、サーバ環境利用料(使い続ける限り)、減価償却費(5年償却)

パッケージシステムをリースで買う場合

パッケージをリースで購入する場合はリース会社の資産を借用して使うことになるため、資産計上することはありません。クラウド業者のパッケージを利用する場合と本質的には同じ利用形態です。カスタマイズ費用や設定作業料を含む全額をリース契約した場合は次のとおりです。

■費用計上するもの
操作指導料(導入時)、サーバ環境利用料(使い続ける限り)、リース料(リース期間中)

クラウド業者のパッケージシステムを使う場合

パッケージシステムをリースで買う場合と基本的には同じですが、機能カスタマイズを行った場合、「カスタマイズ部分(とそれにかかる設定作業料)はユーザー企業の資産である」と見なされるので、かかった費用を資産計上することができます。

■資産取得価格として計上するもの
機能カスタマイズ費用(あれば)、設定作業料

■費用計上するもの
操作指導料(導入時)、パッケージ・サーバを含むサービス利用料(使い続ける限り)

さいごに

「クラウド」という言葉は、テクノロジーの進歩に伴い、その言葉が指し示す範囲がどんどん広くなっています。クラウドについて調べようとするとネットには情報が氾濫・錯綜し、自社システムのクラウド化を検討する前に力尽きてしまう担当者も多いです。クラウドシステムは企業にとって有用な選択肢の一つですので、ぜひ本記事をご参考に検討を進めていただければと思います。

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