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SL大学SYSTEMLIFE-UNIVERSITY

SL大学|3大デジタル点呼制度の違い

SL大学2023.5.31

こんにちは、システムライフ(SL)大学です。SL大学とは2022年に立ち上がった社内教育機関で、毎月勉強会を開催しています。その一部を学習ノートとして公開いたします。

システムライフ大学

3大デジタル点呼制度「IT点呼」「遠隔点呼」「自動点呼」の大まかな違いを整理します。

点呼の大原則

別ノートに纏めたとおり、点呼業務は法令ルールに従って実施しなければなりません。ここでいう法令とは「貨物自動車運送事業輸送安全規則」のこと。これを読み解くと、点呼の大原則が見えてきます。それは、①対面で行うことと、②所属する営業所単位で行うことです。

この①②をまともにやろうとすると、人的リソースの問題にぶち当たります。運行管理者(または補助者)を各営業所に配置する必要があるほか、乗務員稼働中はたとえ夜間帯であっても運行管理者を待機させなければならないからです。結果、事業者は人手不足に悩むことになります。

国交省はそれを分かっているので、「ある条件を満たせば①②の縛りを緩和するよ」という制度をいくつか設けました(運行管理高度化検討会)。業界の問題解消や生産性向上を図るために、いわば例外的に認められた点呼方法で、大きく3つあります。

例外的な点呼方法3つ

下記点呼方法を採用するには、すべて事前の届け出が必要です。

IT点呼

国交省が認定したIT点呼ソフトを使って、点呼業務を行います。

■原則の緩和状況
①対面で行うこと →疑似対面をOKとする(IT点呼ソフトのWebカメラを使う)
②所属する営業所単位で行うこと →他営業所の点呼をOKとする

■満たすべき条件
原則、Gマーク認定が必要。Gマークなしでも優良と認められる条件を満たせばOK(詳しくは自分で調べよう)。簡単に言えば、「あなたの営業所は信頼できるのでリモートでも許可するよ」という制度。

遠隔点呼

国交省が認定した遠隔点呼ソフトを使って、点呼業務を行います。IT点呼導入による事業改善がなかなか広まらないことを受け、Gマーク要件などを撤廃した制度です。

■原則の緩和状況
①対面で行うこと →疑似対面をOKとする(遠隔点呼ソフトのWebカメラを使う)
②所属する営業所単位で行うこと →他営業所+グループ企業間の点呼もOKとする

■満たすべき条件
Gマーク認定が不要となる代わりに、点呼を行う環境・設備への要求が高くなる。例えば、乗務員対話用のWebカメラとは別に点呼執行者を映す別角度のカメラ設置が必要(+部屋の明るさも一定以上確保)、乗務員/点呼執行者ともに生体認証が必要になるなど。簡単に言えば、「これだけしっかりした環境を整えてくれたら点呼範囲拡大を許可するよ」という制度。

自動点呼

国交省が認定した自動点呼機器を使って、点呼業務を行います。もはや対面ですらなくてよいですという割と思い切った制度ですが、現時点で許可されているのは乗務後点呼のみ(乗務前点呼への導入許可も鋭意検討されている模様)。

■原則の緩和状況
①対面で行うこと →非対面をOKとする(対面/疑似対面で行うことをロボットやソフトウェアで代替、たとえば運行管理者への引き継ぎを音声録音する機能など)
②所属する営業所単位で行うこと →他営業所+グループ企業間の点呼もOKとする

■満たすべき条件
遠隔点呼と同じく、Gマーク認定は不要。機器が故障した際のリカバリー体制を取っておかなければならない。つまりバックアップとしての運行管理者配置は必要(完全な無人化は難しい)。

点呼および運行管理業務の今後を考える

業界の人手不足解消や働き方改革・生産性向上を見据え、政府は運行指示者を一元化するための制度改革に舵を切っています(上記の点呼制度は、その足掛かりとも言える)。

複数営業所を持つ運送事業者については、今後、配車~点呼~運行管理まで、本社一元管理するような未来がやってくるのかもしれません。しかしそのためには、全社の乗務員勤怠や車輌位置情報などの見える化・一元化が必要です。特に配車は営業所ごとに業務内容が異なることもあり、だからこそホワイトボード等によるアナログ管理が今でも残っています。これらの業務フロー整理や見直しなども、システム構築するうえでの今後の課題となりそうです。


≫関連ノート:点呼記録簿のルールとシステム化について