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2025.06.27

食肉業界向け

SL大学|食肉業界におけるセット品の基礎知識

こんにちは、システムライフ(SL)大学です。SL大学とは2022年に立ち上がった社内教育機関で、毎月勉強会を開催しています。その一部を学習ノートとして公開いたします。

システムライフ大学

食肉業界におけるセット品について、基礎知識をまとめます。

食肉卸における「セット品」とは

食肉売買でいうセット品というと、「1頭セット」「半頭(半丸)セット」「肩セット」「ももセット」といったものです。セット品を買う人がいるからそのような売り方が存在するわけで、セット品を理解するためにいちど買う側の視点に立ってみましょう。

たとえば牛1頭セットは、単純に考えると「サシが入る肩から、固い肉質のスネまでぜんぶ買う」ということ。実態としては、売りづらい部位を除外して「1頭セット」とすることもあるようです。どちらにせよ、買う側的にはすべての部位を売る予定(または自信)があるから、買います。もしかすると、牛1頭買いをPRする焼肉店に卸しているのかもしれません。まとめて買うほうがお得で手間が少ないため、そうしています。

「ももセット」を注文すると、納品された箱には「内モモ・外モモ・マル・ラムイチ」が入っています。でも違う業者にももセットを注文すると「内モモ・外モモ・芯玉・ランプ」が入っていたりします。「この業者に“ももセット”と注文したらこんな部位がくる」というのが分かっているから、「ももください」とは言わず、「ももセットください(ほかの部位も売り捌けばいいや)」となるわけです。もしかすると、得意先からももセットの注文が入ったのかもしれません。これもまとめて買うほうが都合が良いから、そうしています。

セットで仕入れて、セットで売る

先述のとおり、セット品を仕入れてそのままセットで売るパターンは、よくあります。このパターンの業務に目を向けると、仕入伝票には「品名:牛1頭セット/重量:320kg/単価3,000円/金額960,000円」と記載されており、そのとおりに仕入入力を行います。在庫する場合は「牛1頭セット/320kg(20箱)」という在庫データができるイメージです。

売るときは、仕入単価3,000円をもとに売単価を設定し、「品名:牛1頭セット/重量320kg/売単価3,500円/売上金額1,120,000円」と売上入力を行い納品書を発行します(粗利は売差の16万円)。セットで仕入れてセットで売る場合は、品名が「●●セット」という名前になるだけで、パーツ品と同じ運用であることが分かります。

セットで仕入れて、パーツで売る

先述のとおり、セット品を仕入れて部位単位で売る(パーツ売り)パターンも、よくあります。このパターンの業務に目を向けてみると、結論、セットのまま売るより業務プロセスが増えます。以下詳細。

①仕入処理

仕入伝票には「品名:牛1頭セット/重量:320kg/単価3,000円/金額960,000円」と記載されており、そのとおりに仕入入力を行います。ここは上記と同じです。

②セットを部位に分解

次に在庫ですが、仮に「牛1頭セット/320kg(20箱)」という在庫データだと、どの部位が商品として存在するのかが分かりません。なので、「牛1頭セット320kg」を部位分解して「ネック●kg」「肩ロース●kg」「肩バラ●kg」…と記録する必要が出てきます。これらの情報は、牛1頭セットの明細として一次卸(枝肉カット業者)から受け取っているパターンが多く、それを利用することも多いかと思います。

尚、「牛1頭セット」や「牛半頭(半丸)セット」というのは、一次卸が左右2本または1本の枝肉から製造した部分肉をまるっとセット品にしてあるのが一般的(※一次卸における枝肉カット加工の流れについては別ノート参照)。セット品に含まれるすべての部位が同じ枝肉から切り出された=製造日のほかグレードや個体識別番号もすべて同じ、ということです。豚も半丸セットなどの取引が行われていますが、牛に比べて枝肉が小ぶりなぶん、枝解体時に数頭まとめて製造ラインに流すことも多く、半丸セットといっても同じ個体かどうかは微妙なところ(個体識別管理も不要なので違う個体であっても割とどうでもいい)。

③販売の前に、部位別の原価計算

部位ごとに何がどれだけあるのかが把握できましたが、これだけではまだ販売できません。正確には、「各部位をいくらで値付けして売れば良いか」が分かりません。セット品としての仕入価格は3,000円/kgなので、セット品のまま売るときのように売単価3,500円/kgとすれば良さそうですが、食肉の部位というのは市場価値にばらつきがあるので、それだと商売にならないのです。

そこで部位別の原価計算を行います。これについては枝肉カット業者が行う原価計算と基本的な考え方は同じなので、説明は割愛します(※詳細は別ノート参照)。枝肉業者が歩留率を原価に反映させた状態(※加工業者における原価管理についてはさらに別ノート参照)でセット品の売単価=3,000円/kgを設定し、それを仕入れた卸が枝肉業者に代わって部位別原価計算を行っているイメージです。部位別原価計算後の原価金額合計は、セット品の仕入金額(960,000円)とほぼ一致します。

④売上処理

売るときは、上記で算出した部位別原価をもとに売単価を設定し、「品名:肩ロース/重量15kg/売単価4,000円/売上金額60,000円」と売上入力を行い納品書を発行します。肩ロースの部位別原価が仮に3,500円だったとすると、3,500円×15kg=52,500円が原価金額となり、売差75,000円がこの取引における粗利です。

尚、ここで粗利が出たからOKという単純な話でもなく、「セット仕入れした部位をすべて売り切ったときに最終的な利益がどうか」まで事業者は気にします。今回の例では、1頭セットの仕入金額960,000円と、部位分解後の売上金額合計の比較が必要なので、お客様によってはここまでシステム機能として求められることもあります(在庫機能を入れてトレーサビリティを構築する)。


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