物流倉庫自動化のメリットと9つのテクノロジーを解説

物流業界向け

物流における業務効率化を目的に、倉庫内の自動化を進める企業が増えています。これは大規模な物流倉庫だけの話ではなく、中小規模の倉庫でも作業の効率性や生産性向上を図ろうと進んでいることです。本コラムでは、物流倉庫を自動化することで享受できるメリットや導入する際の注意点を中心に、現在よく利用されている自動化テクノロジーについても紹介します。

物流倉庫の自動化とは

物流倉庫の自動化とは、倉庫内における業務の一部をロボットやシステムなどに置き換えることです。倉庫業務を自動化することにより、効率化や生産性向上を図ることを目的としています。

物流業界は近年、通販の利用者拡大や新型コロナウイルスの影響を受け、需要は年々増え続けています。その一方で、労働人口の減少にともない人手不足が深刻化しているという課題も顕在化しており、増え続ける業務に少人数で対応しなければならないという問題を抱えています。

こうした問題を解決する方法のひとつが、物流倉庫の自動化です。業務を自動化して作業の効率化を図ることで、人手が減っても生産性を維持しようと、導入する動きが拡大しつつあります。

物流倉庫を自動化するメリット

物流倉庫の自動化によるメリットは、作業の効率化を図れるだけでなく、生産性の向上やコスト削減といった要素も期待できます。主なメリットを紹介しましょう。

生産性の向上

システムやロボットは、24時間365日体制で働き続けます。人間のように業務交代や休憩時間を取ることもなく常に稼働していますから、生産性が上がるのが大きなメリットです。商品や保管場所に適したシステムを導入することで作業の安全性も確保できますから、取り扱いに注意が必要なモノ/場所でもスムーズに対応できるようになります。

人的コストの削減

自動化すると人が対応する作業を減らせますから、人材も最小限に抑えられ人件費の削減につながります。繁忙期にあわせて臨時でスタッフを雇用することも、少なくなるでしょう。システムの導入コストやメンテナンスコストはかかりますが、人材を確保する場合でも従業員の給与や教育にかかるコストなどが必要ですから、長い目で見れば自動化したほうがコストを抑えられる傾向にあります。

品質の安定化

人が行う作業では、ピッキングミスなどのヒューマンエラーリスクは避けられません。自動化することでエラーを防げるほか、万一発生した場合でもすぐに発見してカバーできるなど、サービス品質の維持に貢献します。また、倉庫への出入りが多いと、商品に異物が混入したり温度や湿度の変化による影響を与えたりするリスクが高まります。自動化によって人の出入りを減らすことで、商品の品質の安定化を図れるという点もメリットのひとつです。

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物流倉庫の自動化に寄与する注目テクノロジー9選

ここからは、物流倉庫でよく利用されている自動化テクノロジーを「庫内移動/商品探し」「検品」「そのほかの作業」に分けて解説します。

庫内移動や商品探しを自動化するテクノロジー

「ピッキング作業者のもとに、出荷商品が保管棚ごと運ばれてくる」というテクノロジーです。ロケーションからロケーションへの移動、該当商品を探すといった人的作業を、機械やロボットが肩代わりしてくれます。なお、運ばれてきた棚から出荷数をピッキングするのは人が行います。

①立体自動倉庫システム

機械式の立体駐車場のように、人の手では届かないエリアまで保管棚を密に並べ、機械制御でピッキング商品を棚ごと取り出す仕組みです。商品の保管形状に応じて、パレット型やバケット(小型のコンテナ)型などがあります。

倉庫スペースをフル活用するため、倉庫1棟あたりの保管効率が高い点が、他にない特徴です。唯一の欠点は、機械式の巨大ラックを建造するのに億単位の費用がかかること。中小規模の倉庫では、選択肢としてあまり現実感がないのは否めません。

②自動搬送ロボット

一般的なのは、床を動き回るロボット掃除機のような見た目のものです。縦に積み重なった保管棚の下に潜り込んで棚ごと持ち上げ、ピッキング作業者のもとに運んできてくれます。ほかに、保管棚ではなくパレットを持ち上げるタイプや、作業員がピッキング・荷揃えした商品を特定の場所に運ぶだけのロボットなども増えてきました。自動搬送ロボットは、その走行形態により大きく以下の3種類に分けられます。

●無人搬送ロボット:AGV(Automatic Guided Vehicle)
無人で荷物を運ぶロボットですが、「Guided」の言葉のとおり、走行には磁気テープなどの誘導体を必要とします。このため導入の際には、庫内のレイアウト整備や誘導体の設置工事を行わなければなりません。あらかじめ決められた走行ルートに沿ってしか進めないため、ルート上に障害物があると回避動作ができずに停止します。

●自律走行搬送ロボット:AMR(Autonomous Mobile Robot)
「自律(Autonomous)」の言葉が示すとおり、周囲の状況を認識しながら自主的にルートを決め、走行するロボットです。常に360度スキャンしながら走行することで柱や障害物も回避可能となり、AGVのように、ロボットの緊急停止にかかる人手や誘導体設置工事の必要がありません。導入のしやすさから、中小の物流倉庫にも利用が広がっています。

●棚搬送ロボット:GTP(Goods To Person)
先に説明した「床を動き回るロボット掃除機のような見た目のもの」が、これにあたります。作業員は自分の仕分けエリア(ワークステーション)にスタンバイするだけで、あとはピッキング商品が次々と棚ごと運ばれてくるイメージです。導入にあたっては、ロボットが持ち上げられる専用棚や、ワークステーションのエリア確保が必要になります。

検品を自動化するテクノロジー

人がピッキングしたアイテムや数量が正しいかのチェックするのを自動化できるテクノロジーです。(※ピッキングするのは人です)

③自動搬送ロボット(AGV/AMR)

自動搬送ロボットが作業員の庫内移動を肩代わりしてくれるのは前述したとおりですが、メリットはそれだけではありません。ロボットにピッキング指示データを送信すると、指定アイテムをピンポイントで持ってきてくれるため(パレットやコンテナ単位など)、「人が商品を探して選び取る作業」がなくなります。類似品などのアイテム間違いも起こらず、そもそも検品する必要がないのです。

ただし棚ごと(=複数アイテムまとめて)持ってくるタイプのロボット(GTP)だと、ピッキング作業はすべて人的作業になるため、後述する検品システムと組み合わせて使うことになります。

④デジタルピッキングシステム/DPS

DPS(Digital Picking System)では、事前準備としてすべての保管棚やコンテナ(と、場合によってはピッキング棚の間口にも)に、小型のデジタル表示器を取り付けます。

ピッキングの際は、表示器と連動したハンディ端末でピッキングリストを読み込むことで、ピッキング商品/数量がデジタル表示器に表示される仕組みです。ピッキング作業者は点灯したロケーションランプを目印に保管棚に向かい、表示器に表示された数だけピッキングします。ピッキング後にエラーチェックするのではなく、ピッキング時点で機械的サポートを行うことでエラーを防ぐのです。

⑤デジタルアソートシステム/DAS

DAS(Digital Assort System)も、前述のDPSと同じように小型のデジタル表示器を使用します。DASとDPSの大きな違いは、表示器を取り付ける場所です。DASでは、納品先への搬入用ユニット(カゴ車やコンテナなど)に表示器を取り付けて使用します。必然と、納品先別仕分け(種まき式ピッキング)の場面で利用するシステムであることがお分かりいただけるかと思います。

仕分けの際は、表示器と連動したハンディ端末でまず仕分けリストを読み込み、ランプが点灯したカゴ車に対して表示器に表示された数を種まきします。基本的に1人の作業員が1つの品目を担当して納品先別に仕分けしていきますが、表示器ランプは数色あるので、複数人もしくは複数品目での並行作業が可能です。DPSと同じく、仕分け時点で機械的サポートを行いながらエラーを防ぐテクノロジーです。

⑥ハンディ検品システム

ハンディ端末とバーコードを使って、ピッキング商品が指示通りかどうかを自動チェックします。WMSを導入している倉庫では積極的に利用されており、これもれっきとした自動化テクノロジーの1つです。数量検品については、作業者がハンディ端末に手入力したピッキング数を自動チェックしたり、商品外装のITF/GTINバーコードなどを読み取って数量入力まで自動化したりするケースもあります。

ハンディ端末には、一般的なハンディターミナルのほか、ピッキングリストをデジタル表示できるタブレット型端末もよく利用されています。

そのほかの作業を自動化するテクノロジー

倉庫業務の自動化では、上記でご紹介した自動搬送や自動検品を検討する機会が多くなります。なぜなら庫内移動はピッキング作業の大半を占めているし、検品業務はミスが許されないため、これらを課題とする事業者が多いからです。

しかし、なかには他の作業を課題とする事業者もあるでしょう。最後に、その他業務の自動化テクノロジーを紹介します。

⑦パレタイズを自動化するパレタイジングロボット

自動アームロボットを使って、パレタイズ作業を自動化する技術です。アームの先に吸盤のようなものがついており、荷物を持ち上げては積み付けバランスを自動判別し、適切な位置に積み付けてくれます。粉類など重たい商品のパレタイズによく利用され、大型のものでは1つのアームで500kg程度まで持ち上げ可能です。ロボットに荷物を渡すのに、ソーターを使うケースもよく見られます。

⑧ピッキングや在庫移動指示を自動化するタブレット検品

ピッキング指示というと、ピッキングリストを印刷し、それを手に庫内作業員が作業するのが従来のやり方でした。タブレット検品では、無線通信でタブレット端末にピッキング指示情報を送ることができるので、わざわざ印刷する必要がありません。出荷内容の変更や保管棚→ピッキング棚への移動など、リアルタイムで指示を届けられるため、ピッキング・出荷業務が合理化されます。

⑨伝票発行や検収を自動化するSCMラベル/ASNデータ

梱包表示ラベル(通称SCMラベル:Shipping Carton/Container Marking Label)と事前出荷通知データ(通称ASN:Advanced Shipping Notice)を使い、伝票情報のやり取りをオンラインで完結させる手法です。これにより納品書発行や納品チェックなどの作業がなくなることから、一般に「検品レス運用」「伝票レス運用」と呼ばれます。詳しくは別記事で解説していますのでぜひご覧ください。

物流倉庫自動化の課題

物流倉庫の自動化により、業務効率化や生産性が向上する一方で、注意したいポイントもあります。導入を検討する際には、以下の点も確認することが大切です。

導入・メンテナンス費用がかかる

ロボットや機械などのシステムを導入するには、初期費用がかかります。自動化する業務や必要な機械などによって費用は異なりますが、汎用性の高いシステムや設備だと数千万円以上になるケースもあります。また、メンテナンス費用など導入後のランニングコストも必要です。

自動化することで削減できるコストと比較し、投資効果が望めるシステムを導入することがポイントです。

従業員への研修が必要

新しいシステムを導入する際には、その使い方や業務フローなどを従業員に教育する必要があります。そのための研修を実施することもあるでしょうし、マニュアルやルールの策定も必要でしょう。システムによっては、慣れるまでに時間がかかる可能性もあります。

マニュアルやルールは、あらかじめ策定しておくことが重要です。不明点があるときに従業員が確認するのはもちろん、新しい社員が入社した際にもマニュアルやルールがあればスムーズに対応できます。

新しい体制の構築も必要

自動化にともない、業務フローを再構築したり余剰人員を再配置したりと、業務内容や組織体制を大きく刷新することもあるでしょう。しかも、通常の業務と並行してシステム導入を進めなければならず、場合によっては業務に支障をきたす可能性もあります。

通常の業務にできるだけ影響が出ないよう無理なく導入できるシステムなのか、稼働を止めても導入するメリットがあるのかといった点も確認・検討したうえで、判断することも大切です。

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まとめ

人手不足などの課題を解決する一手として、物流倉庫の自動化は有効な手段です。業務効率化や生産性の向上も期待できますから、経営に大きなメリットを与えてくれるでしょう。ただ、導入コストやメンテナンスコストなどの費用や、新たな体制を構築する必要があるなど、導入時には手間とコストがかかります。

物流倉庫の自動化を検討するときは、まず自社の抱える課題を明確にし、その課題は自動化で解決するのか、コストは見合うシステムなのかといった点で検証することが大切です。そのうえで効果を最大化できるのであれば、この記事で紹介した9つのテクノロジーを含めて、自社に適した自動化のかたちを検討してみましょう。

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