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SL大学SYSTEMLIFE-UNIVERSITY

SL大学|加工管理システム構築のポイント

SL大学2023.5.26

こんにちは、システムライフ(SL)大学です。SL大学とは2022年に立ち上がった社内教育機関で、毎月勉強会を開催しています。その一部を学習ノートとして公開いたします。

システムライフ大学

加工管理の目的から、加工管理システムが果たすべき役割・機能要素を整理します。

加工管理の目的3つ

目的①業務効率化

食肉カット加工の基本業務フローは、【加工指示】→【原料を出庫してカット加工】→【製品が出来上がったら計量してラベル貼付】→【加工実績情報を収集】です。これをベースとして、受注生産型の事業者ならスタートが【受注処理】になったり、出来上がった製品をすぐに出荷する場合は【店舗別仕分け】【伝票発行】などのプロセスが加わります。

この一連の業務フローを円滑に進める目的で加工管理を行います。これをアナログ管理(手書きの加工指示や製造日報による実績収集など)する事業者で記入ミスや時間が掛かるなどの問題が発生している場合は、それを解消する加工管理システム(加工指示書の自動作成や計量器連動による実績収集など)を構築する必要があります。

目的②歩留まり計算・原価管理

食肉カット加工は、余分な脂等をカット・整形したりするので、出来上がった製品重量は原料重量よりいくらか目減りします。これを把握するのが歩留まり管理です。例を見てみましょう。

【加工実績】投入原料:10kg、出来上がった製品の合計重量:9kg →歩留率:90%

この重量の目減りに影響を受けるのが、商品の原価。原料を1,000円/kgで仕入れたとして、加工前の商品価値(原価)は1,000円x10kgで10,000円です。でも手元に残ったのは9kgなので、「これは1,000円×9kgで9,000円の価値の商品です」とはなりません。あくまで商品の価値は買った値段の10,000円であり、しかし9kgであることは変えられないので、kg単価のほうを変えて価値を10,000円に近づける必要があるわけです。そのために、次の計算式でkg単価を再計算します。

【原価再計算】元の原価(1,000円/kg)÷歩留率(0.9)=再計算した原価(1,111円/kg)

1,111円×9kgで、出来上がった製品の価値は9,999円となりました。ただし、これもまだ正しい製品価値とは言えません。実際には、加工にかかった費用=加工賃(人件費や水道光熱費、梱包資材等)が発生しており、製造間接費として原価に反映させます。そういうわけで、歩留まり計算後の原価+キロあたり加工賃を最終的な製品原価とし、売価設定することが多いかと思います。

この一連の歩留まり・原価計算をすべてアナログ管理しているところもあれば、歩留まり計算はシステムで加工賃はどんぶり勘定、というところもあります。現実的には、加工賃を稼働実績に基づいて厳密に算出できることのほうが少ないので、歩留まり管理のどんぶり勘定脱却(=原料と出来高の紐づけ徹底)が加工管理システムの進む道かと思われます。

目的③トレーサビリティ

原則、国産牛のカット加工を行う事業者のみが対象。「どの個体識別番号の原料から、どの製品を作ったか」を、加工場はきちんと記録しておく必要があります(牛トレサ法)。大量生産する場合は、1回で数頭分の原料(=個体識別番号が複数)を同じラインに投入することになるので、個体識別番号トレース用のロットNo.を割り振って管理します。

この一連作業(原料の個体識別番号の記録と製品情報への引継ぎ)については、いまもExcel管理する事業者が少なくありません。管理の手間や入力ミスを解消するため、加工管理システムでは原料と製品を指示書No.(バーコード)で紐づけて、トレーサビリティを実現します。

在庫管理と加工管理は地続き

在庫管理未導入の状態でも加工管理システムは構築できますが、実際、在庫管理と加工管理は地続きです。たとえば、在庫管理用の自社ラベルが原料にあらかじめ貼付されていれば、加工時に原料情報としてバーコードスキャンするだけで、上記目的②③(歩留まり計算・トレーサビリティ)の役割を果たします。また、加工後の製品に貼付するラベルをそのまま在庫管理ラベルとして使用できれば、実績収集~製品入庫~出荷・伝票発行作業が効率化できます(目的①)。

加工管理システムを考える際は、在庫管理フローまで設計できるとベストかと思います(既存の在庫管理システムがある、または新規導入する場合)。


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