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SL大学|車輌別人件費のとりかた

SL大学2024.6.18

こんにちは、システムライフ(SL)大学です。SL大学とは2022年に立ち上がった社内教育機関で、毎月勉強会を開催しています。その一部を学習ノートとして公開いたします。

システムライフ大学

車輌原価管理を行う際に必要になってくる「車輌別人件費」のとりかたをまとめます。

人件費=給与 が基本

給与は1ヶ月単位で金額が確定する

持ち車=車輌ごとに担当ドライバーが決まっている場合、そのドライバーに支払った給与の額面を、車輌別コストの人件費項目に割り当てます。正社員の場合、基本給・残業代・運行手当などは1ヶ月単位で金額が確定していくため、リアルタイムで人件費を捉えることはできません。「先月分の車輌別収支が見たい」といった用途では有効です。

ドライバーの給与はどのようにして決まるか

給与の内訳は、一般的には「基本給」「残業代」「手当」など。基本給は昇級時期にしか変動しないことが多く、給与ソフトなどで賃金台帳管理されているかと思います。「残業代」「手当」は基本給からプラス要素となり、「欠勤」などは基本給のマイナス要素となります。

各ドライバーの残業・手当・欠勤は、どのように把握されているか

まず、ドライバーにとっての「手当」でよくあるのは、運行手当(長距離手当や深夜手当など)です。配送注文の内容や配車結果により、ドライバーごとにあったりなかったりします。これらの情報は、運転日報(運行実績データ)から拾います。

「残業」や「欠勤」はどうかと言うと、普通は勤怠ソフトで出退勤を取って把握されています。しかし別ノートに纏めたとおり、ドライバー業は様々な事情があって勤怠ソフト以外の方法で出退勤を取るケースも多いです(デジタコの出庫/帰庫記録や、点呼ソフトの乗務前/乗務後点呼記録など)。

残業時間は単なる出退勤記録だけで取れない場合もある

ドライバーの労働形態で特徴的なのが、「休息時間」の存在です。出勤~退勤までに昼休みなどの「休憩時間」が挟まれる点は一般企業と同じですが、例えば長距離運行になるとトラック車内や宿泊施設で仮眠を取る必要が出てきます(いろいろルールがあるので詳しくは自分で調べて)。そうなると、「今月の法定労働が●時間で、時間外労働(残業)が●時間だった」という情報を得るためには、出退勤のタイムカードだけでは把握できないわけです。

これらがどのように記録・管理されているかというと、一般的にはデジタコが使われます(休憩や休息の開始/終了ボタンを押す)。その後、勤怠ソフトにデータ連携 or 手集計して労務管理(改善基準告示に沿った労働時間管理や体調管理など)を行い、最終的に給与ソフトに1ヶ月間の勤務時間を登録する流れです。

システム企画時の注意点

単純に給与ソフトから1ヶ月分の給与データを連携するだけなら良いですが、新システム側で独自に車輌別人件費を算出する場合、ヒアリング項目や考えることが増えます。

勤務記録の取り方は企業ごとに異なる

ドライバーの出退勤や残業時間の把握(=労務管理)の仕方は企業ごとに異なるので、人件費算出のための勤務情報をデジタコから取るのか点呼ソフトから取るのか、といった判断をするには、詳細なヒアリングが必要です。

そもそも実際の人件費を使う必要があるのか

「車輌別原価を正しく捉えたい」という要求の根っこにあるのは、「運賃設定の妥当性を上げて収益改善したい」というニーズです。そして、これはあくまで管理会計の話であることを忘れてはいけません(財務会計上の原価や損益管理は、実費をもとに会計ソフトで行われる)。お客様の要件次第ではありますが、場合によっては「標準人件費」などをマスタ内に設けてシンプルに管理するほうが、全体合理性は高い可能性があります。

ドライバーが入れ替わったりすると複雑になる

上述の内容は、トラック1台に担当ドライバーが1人付いているケースを前提としています。しかし、トラック1台に対して日替わりでドライバーが入れ替わったり、長距離便の中継輸送ではドライバーがある地点で途中交代したりするので、人件費の按分をどのようにするかを考えなければなりません。

原価だけでなく車輌別損益まで管理する場合

車輌別原価と車輌別売上と比較することで、「車輌別損益」を見える化したい、という要件もあるあるです。車輌別売上を把握する方法としては、運転日報(運行実績データ)を使うことが多いかと思います。1件の配送注文(売上情報)に対しトラック1台で完結するのであればシンプルですが、1件の注文を複数のトラックで捌く場合や、混載便で注文とトラックを紐づけられない場合などでは、売上情報の按分方法を考える必要が出てきます。


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