慢性的な人手不足にも関わらずスピーディーな納品が当たり前とされる今、在庫管理の課題に悩む企業はとても多いことでしょう。在庫管理の不手際は作業効率を悪化させるだけではなく、顧客満足度や売上の低下にも直結します。しかし、在庫管理の問題は複数の要因が絡み合っているケースも多く、具体的な改善点が把握できていない担当者もいるのではないでしょうか？本記事では、在庫管理の現場でよくみられる課題と5つの解決策を紹介します。自社に当てはまる要素があれば、問題解決の糸口になるかもしれません。
紙・Excelでの在庫管理における課題
導入コストが安く手軽な管理方法として、紙やExcelで在庫管理をしている現場も多いかと思います。そういった現場では以下の3つの課題がよくみられます。
ヒューマンエラー
紙やExcelなど手作業に頼る部分が多い在庫管理方法では人為的なミスが避けられません。特に、入庫・出庫記録のように頻繁に数字変更をする作業や、棚卸のような膨大な物量を扱う作業では、カウントミスや入力漏れなどのヒューマンエラーが発生しやすくなります。
在庫のロスや機会損失
紙・Excelでの管理方法はまとまった入力時間が必要なため、リアルタイムで在庫管理ができないのも課題です。在庫の現状を把握できないと、突然の在庫切れや、それを防ぐための余剰在庫を抱えるリスクが生まれます。欠品や納品の遅さによる機会損失は企業にとって致命的です。売上の低下はもちろん、顧客満足度の低下や管理コストの増加にも繋がります。
在庫管理の煩雑化・属人化
紙・Excelでの管理は、複雑化・属人化しやすい傾向があるので注意か必要です。担当者独自の記入方法や、Excelのマクロ機能といった担当者にしかわからない機能を使うなど、他の人間が作業を代われない状況になっているケースが珍しくありません。特定の人物しか管理できない、在庫を動かせない状況は企業にとって大きなリスクになります。
システムでの在庫管理における課題
在庫管理システムも決して万能ではありません。入出庫管理や在庫のロケーション管理など便利な機能が多くミス削減や効率化を進められ、メリットは多いものの、システムならではの課題もあります。
システム管理の属人化
在庫管理システムで管理するためには、ITやツールを利用するための知識やスキルが必要です。IT人材の不足や教育機会が充分に設けられない現場では、特定の人しか扱えないため期待したほどの業務効率化に繋がらなかったというケースも珍しくありません。
システムが自社に適していない
在庫管理システムは、自社に適したシステムを選ぶ必要があります。「料金が安くてお得」「知名度が高いから安心」といった理由で安易に既存のシステムを導入してしまうと、欲しい機能がなかった、かえって手間が増えたという事態になりかねません。
必要なデータをすぐに取り出せない
在庫管理システムの種類によってはデータ抽出に難しさや不便さを感じる場合も多いようです。入出荷の在庫データは膨大で、経営判断に必要なデータは企業によって異なります。欲しいデータをすぐに取り出すには、事前にそれなりのシステムを組んでおく必要があります。
在庫管理の課題を解決する５つのポイント
在庫管理でありがちな課題を解決するためには、5つのポイントを押さえましょう。
在庫管理マニュアルを作成する
在庫管理業務は一定のルールを決めてマニュアル化しましょう。マニュアルを徹底することで管理業務の属人化を防ぎ、標準化を図れます。また、マニュアルはできるかぎり簡素な内容でつくり、実際に運用しながら改善していくことをおすすめします。複雑化すればまた属人化してしまうので「誰でも分かる作業」を常に心がけることが大切です。
都度、適性在庫を修正する
適正な在庫量は常に一定ではありません。商品の需要・季節の変化により適正在庫量も変動しますので、こまめな修正・再設定をして欠品や余剰在庫に備えましょう。システムを導入する際はデータ分析基盤の構築をしておくと今後の適正在庫量の予測に役立ちます。
在庫状況を見える化する
過剰在庫や欠品を抑えるためには「在庫状況の見える化」がポイントです。「どこに」「何が」「どれだけある」といった在庫情報を、マーケティングや営業、仕入れ担当などの各部門と共有すれば納品や入荷もよりスムーズに行えます。在庫情報、入庫履歴をもとに作成しましょう。
全体の業務プロセスを把握し、在庫管理の最適化を進める
製造業のように、在庫管理の対象が調達・生産・加工・販売などの複数の業務に関わる場合は、各部門にスムーズに在庫が流れるように大きな視点で最適化を進める必要があります。一般的な入出庫方法やシステム活用法が自社のプロセスに最適とは限りません。
在庫管理システムを導入する・乗り換える
正確な入出庫記録のサポートには在庫管理システムの導入がおすすめです。万能ではないにせよ手作業よりもメリットが大きいのは確かです。
≪在庫管理システムのメリット≫
・ヒューマンエラーの削減
・時間と手間の削減
・属人化の解消
・各部門との情報共有
すでに既存システムを利用していて課題を感じる場合は、必要な機能を精査して他の在庫管理システムに乗り換えるといいでしょう。
在庫管理システムの選び方
在庫管理の課題を解決するためには、自社に適した在庫管理システムを導入するのが大切です。在庫管理システム選びの3つのコツをご紹介します。
課題解決に必要な機能が備わっている
まずは、自社の課題を解決できる在庫管理システムを選ぶことが重要です。例えば、リピーター顧客の獲得が課題であれば、出荷記録と顧客管理機能が紐づけられるシステムを選ぶと、在庫データをマーケティング情報として引き出せます。システムを導入する前に現状の課題を明確にしておきましょう。
既存システムに連携できるか
在庫管理システムを選ぶ際は、既存のシステムと連携できるかも重要です。販売管理システムのほか、ECサイトのショッピングカートやPOSシステムなどの既存システムと連携できないと、二重入力の手間が発生するなど在庫管理システムの使い勝手が悪くなり、業務効率化の妨げやヒューマンエラーの原因になります。
自社の業務内容に適しているか
在庫管理システムは様々な業界に向けて、多種多様な機能で作られています。例えば食肉を扱う企業向けなら「食品卸業向け」「食肉業界向け」「不定貫対応」など、それぞれに合った機能があらかじめ搭載されています。まずは業種から絞ってシステムを探すと使いやすい製品が見つかるはずです。
まとめ
在庫管理の課題は、紙やExcel管理ではヒューマンエラーや機会損失、システムでは現場との不適合やデータ抽出の難しさなどがあり、管理作業の属人化は共通する問題になっています。
そういった在庫管理課題の解決策としては、マニュアル化やこまめな適正在庫数の修正、在庫情報の見える化などが効果的です。すでにシステムを導入している場合は、改めて業務全体を俯瞰して本当に必要な機能が搭載されているものに乗り換えましょう。
在庫管理システムを選ぶ際は、必要機能の搭載のほか、既存システムとの連携や業界に特化した機能があるか確認すると失敗が少ないでしょう。在庫管理システムは安さや人気に惑わされず、「使いやすさ」で選ぶことが課題解決の近道です。
