誤出荷を生む作業ポイント3つと、原因別の誤出荷対策

物流業界向け

出荷品質の改善に悩む倉庫管理者様は多くいらっしゃいます。誤出荷が発生すれば、サービスの信頼性が低下するだけでなく、クレーム対応や再出荷といった業務負荷が増大します。物流倉庫にとって「誤出荷ゼロ」は永遠のテーマです。この記事では、出荷業務を3つのプロセスに分解したうえで、それぞれの誤出荷リスクとその対策について解説します。

誤出荷要因となる作業ポイント3つ

パソコンが動かなくなった、そんなときサポートセンターに電話すると「お客様、コンセントは差し込まれていますか?」と真っ先に確認されます。顧客の怒りを買いやすい“コンセント問答”として業界内では有名ですが、これは解説すると

『問題の発生要因をプロセスの上流から潰していくことで、解決ポイントを特定する』

という、合理的で漏れのない問題解決手法です。その漏れのなさから、ISOなどの品質管理やリスク対策にも取り入れられています。誤出荷対策においても、出荷プロセスを整理したうえで上流から順に検討する手法は、非常に有効です。本記事では出荷プロセスを以下の3つに分解し、それぞれの作業ポイント別に、誤出荷が発生する代表的な原因とその対策について解説していきます。

  • 作業ポイント1:出荷指示
  • 作業ポイント2:ピッキング・仕分け
  • 作業ポイント3:配送

誤出荷発生ポイント1:出荷指示

誤出荷と聞くとピッキングなどの倉庫作業に目が向きがちですが、ピッキング指示自体が間違っていることもあります。この場合、いくら倉庫現場にハンディ検品を導入したところで、誤出荷を食い止めることはできません。出荷指示場面でのエラー対策は、ぜひとも押さえておきたいポイントです。

注文情報の入力ミス

注文データからピッキング指示書を出力する運用の場合、注文情報の入力ミスがそのまま誤出荷に繋がります。数量の打ち間違いだけでなく、規格やブランド違いなどで類似商品が大量にある場合や、温度帯など細かい条件指定がある場合は、コード入力ミスも起こりやすくなります。

≪対策≫
▪ Web受注を導入し、注文入力を不要にする
▪ 納品先別の注文履歴データを活用するなどし、手入力する情報を最小限にする

ロット指定ミス(賞味期限逆転)

食料品や医薬品の出荷では、商品自体は注文と相違なくても、前回納品したものより賞味期限・消費期限が古いと信頼を損ないます。商品あたりの在庫量が多く、複数ロットで管理している場合は注意が必要です。

≪対策≫
▪ 納品先別に出荷最終ロットを管理し、ロット指定時に警告表示を出すなどして賞味期限逆転を抑止する

誤出荷発生ポイント2:ピッキング・仕分け

誤出荷要因で最も多いのが、庫内での作業=ピッキングミスです。気温環境やロケーション移動、時間の制約など作業者の集中力に影響を与える要素が多く、その結果として人的ミスを引き起こします。ここではミスが起きることを前提に、いかに抑止の仕組みを構築できるかがカギとなります。

類似アイテムのピッキングミス

色やサイズなど規格違いが複数ある商品は意外と多いです。そのほかにも、外箱や内箱といった荷姿違いも存在します。作業者は、限られた時間でそれらを区別しながらピッキングしなければならず、ちょっとした気の緩みがアイテム誤出荷に繋がってしまいます。

≪対策≫
▪ 商品バーコードスキャンによるアイテムチェックを行い、エラーを抑止する
▪ ロケーション管理とピッキングリストの親和性を高め、ピッキングを迷わないようにする
▪ 類似アイテムは固定ロケーションにするなど、保管方法を工夫する

数え間違い

ケース単位の間違いもありますが、特に数量ミスが発生しやすいのは、日配品などの個別アイテムを種まき式(店舗別など)に仕分けする場面です。

≪対策≫
▪ ハンディ検品を行い、実際のピッキング数を都度入力する運用を徹底する(エラーチェック)
▪ DASシステムによるピッキング仕分けなど、作業者が出荷数に注意を向ける環境を作る

セット品・同梱品の入れ忘れ、入れ間違い

ギフトなどのセット品だけでなく、キャンペーン付属品、カタログや納品書など、ピッキングリストには様々な同梱指示が記載されています。忙しい中の細かな作業となるため、見落としによる入れ忘れ・入れ間違えのリスクは考慮しておく必要があります。

≪対策≫
▪ セット品の全アイテムをバーコード検品し、エラーチェックをかける
▪ ピッキングリストだけでなく検品端末画面にも同梱品がある旨を強調表示し、見落とし防止する

宛先仕分けミス

アイテムや数を正しくピッキングしていても、宛先確認に注意が向かずテレコ出荷を起こすことがあります。また作業者本人はしっかりと宛先確認していたつもりでも、かご車やオリコンの宛先タグや、外装に貼り付けた配送伝票が間違っている場合もあります。

≪対策≫
▪ DASシステムやハンディ端末を利用し、宛先チェックをかけながらピッキング仕分けを行う
▪ ピッキングリストと配送伝票を一体型にするなどして、ピッキングと伝票貼付の時間を空けない

担当者の思い込み

出荷内容がパターン化して作業者が慣れてくると、ピッキング作業がルーチンワークになりがちです。このような状態ではピッキングリストのイレギュラーな変化に気づきにくく、「いつもの注文」でない場合に出荷ミスが発生してしまいます。

≪対策≫
▪ ハンディ検品による物理チェックを行う

誤出荷発生ポイント3:配送

ピッキングまで正しく完了したからといって「誤出荷ゼロ」になるわけではありません。配送プロセスも人がする業務です。人的エラーのリスクをしっかりと検討し、対策を打っておくとよいでしょう。

配送伝票の貼り間違い

配送伝票を一括出力してピッキング後に貼付していく運用の場合、作業者は配送伝票の束の中から該当の宛先を探し出さなければなりません。伝票貼付は非常にミスが起こりやすいポイントであり、テレコ出荷を防ぐための工夫が求められます。

≪対策≫
▪ ピッキングリストと配送伝票を一体型にするなどして、伝票探しする作業を無くしてしまう

トラック積み下ろしミス

自社で配送まで行う場合と、配送を他社委託している場合がありますが、どちらにせよトラックドライバーは移動や積み荷の上げ下ろしで疲れています。A社に下ろすはずだった荷物を間違えてB社に下ろす納品ミスもあれば、荷物を積み残しするケースもあります。荷積み・荷下ろしはドライバーの責任、ではなく、出荷業務の一部として「どうすれば誤納品を防げるか」、きちんと検討しておく必要があります。

≪対策≫
▪ 出荷バースの荷物保管や荷積み・配送指示を工夫し、積み下ろし時にドライバーが迷わないようにする
▪ 納品先での検品を徹底する

さいごに

近年の通販市場成長や感染症流行による在宅需要で、物流ニーズは拡大の一途をたどっています。従来の物流の在り方では対応できなくなってきており、ピッキングを効率化するAIロボットなどはすでに実用化されました。とはいえ、中小の物流倉庫はまだまだ人手により支えられているのが現状です。だからこそ、ハンディ端末などによるデジタル検品が未だ有効なのです。今後ますます高まっていく出荷需要の中で、本記事が物流倉庫の出荷業務のお悩みを解決する一助となれたらと思います。

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