在庫管理の見える化で解決できる課題とシステム導入のポイント

物流業界向け

目視確認やエクセル入力、在庫の配置替え…アナログ手法での在庫管理に限界を感じている企業様は少なくないかと思います。一定の規模を超えた在庫管理には、システム導入による「見える化」が必要です。在庫管理の見える化が実現すれば、いま抱える多くの問題が解決するでしょう。

この記事では、在庫管理の見える化について解説します。見える化によって解決できる課題と、実現するための在庫管理システム、さらに導入のポイントまで、詳しくご紹介していきます。

在庫管理の見える化とは

在庫管理の見える化とは、在庫全体の状況を誰もがすぐに把握できる状態にすることです。

すでに見える化の一環として、在庫に倉庫内住所を割り振る「ロケーション管理」や職場環境の整理整頓や維持を図る「5S」を徹底している現場も多いかとは思いますが、アナログな管理方法だけで見える化を実現するのは限界があります。

手が回らず煩雑に置かれている在庫がある、余剰在庫や在庫切れが多い、毎日のように他の部署から在庫の問い合わせがくるなどの状況が発生しているのであれば、在庫管理システムによる効率化が必要でしょう。

導入にはそれなりのコストがかかりますが、在庫管理システムによって見える化が実現できれば、在庫の過不足の把握だけでなく、発注漏れや納品遅延、滞留在庫の抑制、作業の効率化などが可能になるためコスト削減や売上向上も期待できます。

在庫管理の見える化で解決できる課題

在庫管理の見える化でどのような課題が解決できるのか、具体的に見ていきましょう。

在庫管理の手間や作業時間が多すぎる

在庫管理業務には、日々の入出庫記録や在庫の整理整頓・仕分けのほか、棚卸やデータ入力作業などが含まれ、膨大な人手と時間が必要です。慢性的な人材不足に悩む物流業界では死活問題でしょう。作業効率の悪さは、生産性の低下だけでなく作業負荷の高さや残業の増加に繋がり、従業員の退職も招きかねません。

在庫管理システムで見える化を実現できれば、入出庫記録や荷物追跡が簡単になるほか、目視確認やPC入力などの手間が減るため従業員の残業削減にも繋がります。

現状の正確な在庫数が分からない

人の手作業に頼るアナログな管理体制の場合、常に正確な在庫数を把握するのは困難です。現物の見逃しや、在庫管理表への入力漏れ・記録ミスが発生しやすいことに加え、在庫管理表を更新するのに時間がかかるため、実在庫と帳簿在庫のデータにズレが生じます。在庫の滞留状況も発見しにくく、廃棄による在庫ロスが発生するケースも珍しくありません。

しかし、バーコードなどを活用する在庫管理システムでは人的ミスは大幅に削減され、在庫チェックと同時にPC上の在庫データも更新されます。正確な在庫情報をリアルタイムで確認できるようになるのです。

過剰在庫による倉庫の圧迫

在庫状況が正確に把握できない状況では余裕をみて発注することが増え、過剰在庫を抱えやすくなります。過剰在庫は倉庫スペースを圧迫するだけでなく、キャッシュフローの悪化や在庫ロスに繋がるため、経営者としても防ぎたいところでしょう。

見える化で正確な在庫状況が分かれば発注を適正化することができ、保管コストの最小化と倉庫スペースの有効活用が可能になります。

部署間在庫確認の煩雑さ

リアルタイムの在庫状況が把握できない環境では、製造部や営業部が頻繁に在庫管理部門に在庫を確認しなければなりません。そのたびに現在の在庫数を確認する担当者も、連絡をする他部署も時間をとられることになり、会社全体の業務効率が下がってしまいます。

システムを通じて現在の在庫状況を共有できれば、そういった煩雑な確認業務はなくなり、各部署の業務スピードが高速化されます。

納期の遅れ

在庫状況の把握の遅れは、そのまま納期の遅れに繋がります。帳簿在庫の不明瞭さやデータ反映までのタイムロスは、原材料の欠品に気付かず発注が遅れて生産が滞る、注文を受けたにも関わらず商品の在庫が欠品しており出荷が滞るなどの事態を引き起こすのです。

製造や納品スピードの改善を図るには、在庫管理の見える化が不可欠と言えます。

在庫を見える化する在庫管理システムとは

在庫管理システムは、リアルタイムでの在庫数の把握はもちろん、入荷から出荷までの一連の動態記録、滞留在庫や期限切れ管理など、在庫の状態を総合的に可視化することができます。

以下のような基本的な在庫管理機能のほか、アパレル業界向け・食品業界向けなど業界に特化した機能を持つ製品もあり、自社に合わせたカスタマイズも可能です。

≪在庫管理システムの基本的な機能≫
●入出庫管理機能:商品の入出庫数、返品数などを記録・管理する
●在庫照会機能:品目ごとの在庫残数や滞留状況などを一覧で表示する
●在庫移動機能:他の倉庫や店舗などへの在庫の移動を記録・管理する
●入出荷指示機能:ピッキングリストや納品先別の仕分けリストなどを作成する
●棚卸機能:実在庫と帳簿在庫の照合や在庫調整を行う
●マスタ管理機能:在庫する商品情報などを自社最適化した形で登録・管理する

在庫管理システムを導入するときのポイント

在庫管理システムは幅広い機能や特性があるため、導入する際は自社業務に適しているか慎重に見極めることが大切です。導入時に気を付けたいポイントをご紹介します。

同じ業種・規模での実績

在庫管理システム選定時は、自社と同じような業種、または、同程度の事業規模をもつ会社への導入実績があるかを確認しましょう。業務システムは汎用的なものから専門性の高いものまで多種多様に存在するため、自社業務に相性がいいものを選ばなければなりません。

たとえば在庫の単位1つとっても、一般的な「個」や「ケース」だけでなく、不定貫商品は「kg」、製紙は「連」など業界特有の管理単位への対応が必要です。新しいシステムで普段使っている単位が扱えないと、見える化以前にまともに在庫管理が行えなくなる可能性があります。

過不足ない機能とカスタマイズ性

在庫管理システムは、過不足ない機能とカスタマイズ性の高さに注目しましょう。在庫管理システムはカスタマイズを可能とするものがほとんどですが、やみくもにカスタマイズすると導入コストが高くなるだけでなく、運用が複雑化し現場が混乱・疲弊します。本当に必要な機能に絞りつつ、不足分をカスタマイズで補うのが基本です。

カスタマイズの例としては、アパレル業界であれば同じ商品でサイズや色違い管理を行えるようにする、食品業界であれば賞味期限管理の機能を付けるなどが挙げられます。自社で扱う商品を管理するにはどのような管理項目や機能が必要なのか、現場に合わせてカスタマイズするべき点はどこなのかをよく検証し、メーカーに相談しましょう。

現場での使いやすさ

在庫管理システムを導入する際は、現場での使いやすさも意識しなければなりません。システムを利用する担当者が入力しやすいか、現場の業務フローに無理なく組み込めるかなど、事前に確認することが大切です。トライアルができる製品もあるので、実際に運用を試したうえで現場の意見を募るのも良いでしょう。

既存システムとの連携

既存の在庫管理システムとの在庫データ引継ぎや、受発注システムとのデータ連携は、非常に重要なポイントになります。引継ぎや連携ができない場合、データを別の方法で引継ぎ・共有したり、二重入力での運用をしなければならなくなったりと、かえって手間と時間を取られてしまいます。

データ連携は導入前に必ず確認しておきましょう。可能であれば、販売管理システムとも連携できると会社全体の業務ロスが省かれるのでおすすめです。

セキュリティ対策

在庫管理システムは便利な製品ですが、在庫情報をデータとして管理する以上、情報漏えいのリスクに備えなければなりません。在庫情報は販売や売上の情報と深い関わりを持つため軽視は禁物です。セキュリティ対策はメーカーによって対応が異なるので、前もって必ず確認しましょう。

導入後のサポート体制

システムを導入すれば、操作方法への疑問やトラブル、OSのバージョンアップなど、将来にわたるサポートが必要になります。導入後のサポート体制は重要なチェック項目です。特に、対応時間や対応方法は自社の事業形態にあったものである必要があります。メーカーによっては24時間365日対応可能な場合があるほか、最近はチャット形式でサポートしてもらえるような製品もあります。

長期的なランニングコスト

在庫管理システムは初期費用だけでなく月額のランニングコストや人件費なども発生するため、長期的目線で予算を立てましょう。たとえばクラウド型は、ユーザー数や拠点数、入出荷のデータ件数などによって月額コストが異なる場合があります。一方、パッケージ型は一度購入してしまえばシステム自体の月額費は不要ですが、OSバージョンアップなどがあると大型改修が必要になことがあるので注意が必要です。

まとめ

在庫管理の見える化とは、在庫全体の状況を誰もが正しく把握できるように整備することです。人の作業に頼る手法では限界があるため、必要に応じて在庫管理システムの導入すると良いでしょう。

システムによる在庫の見える化で、在庫管理作業の効率化や精度アップ、リアルタイムでの状況把握や担当者間の情報共有を可能にします。導入コストはかかりますが、滞留在庫の早期発見や納品リードタイムの改善などにも効果があり、結果的には業績アップにも寄与するはずです。

多種多様な在庫管理システムが開発されているため、同業種や同規模の会社での導入実績や既存システムとの相性などを踏まえて選ぶのがポイントになります。ランニングコストやサポート体制などとあわせて、慎重に検討しましょう。

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