食肉卸に必要な販売管理システムとは~ポイントと選び方

食肉業界向け

販売管理システムを比較検討する際は、コストや導入形態といった様々なチェックポイントがありますが、なかでも機能面は業務効率に直結する重要なポイントです。この記事では、販売管理システムの機能ラインアップが自社業務に適しているかどうかを見極めるコツを、「データ入力のスタート地点」「特徴的業務への対応度合い」という2つの視点に分けて解説します。

食肉卸が販売管理システムを見極めるポイント

食肉卸売業の皆さまが販売管理システムを選定される際、コストや導入形態(クラウド型orオンプレミス型)はもちろんですが、「この機能で自社業務が問題なく遂行できるか」という点は特に重要視されるポイントです。コストやクラウド化の見極めについては、別記事で詳しく解説していますのでそちらをご覧いただければと思います。

ここでは、パッケージごとの機能ラインアップの違いや自社業務とのフィット具合をどのように見極めればよいのかについて、食肉業界歴およそ30年の経験で培った弊社独自の視点で解説します。食肉卸が販売管理システム選びで見極めるべきポイントは、大きく以下の2つです。

1.データ入力のスタート地点を見極める
2.特徴的業務への対応度合いを見極める

データ入力のスタート地点を見極める

販売管理データ入力のスタート地点とは

販売管理システムはパッケージメーカーによってメニュー表記や作り方に違いがあるため、一見大差あるようにも見えますが、実は基本構造はほとんど同じです。超単純化すると、「仕入」「売上」、そしてその差分である「(販売目的で所有する商品の)在庫」で構成されています。

≪販売管理システムの基本機能≫
仕入関連機能:仕入管理、買掛管理、支払管理
売上関連機能:売上・請求管理、売掛管理、入金管理
在庫関連機能:在庫管理、棚卸管理

上記基本機能だけのシステムがあるとすると、データ入力の始まりは仕入入力売上入力です。これを基本形として、パッケージによっては、その上流業務である発注入力受注入力からスタートする場合もあれば、在庫(モノの動き)という観点から入庫入力出庫入力からスタートする場合もあります。さらに、それらを柔軟に使い分けられるパッケージも存在します。

データ入力のスタート地点をどの業務に設定するかは、「どのタイミングで入力作業を行えるか」「入力に必要な情報をいつ取得できるのか」「早期入力により後続業務がどれくらい効率化されるか」といった業務合理性の問題に左右されます。

受発注管理からスタートする場合

結論から言えば、受発注データがあると後続業務は確実に効率アップします。受発注入力の手間が課題ですが、ある程度のサポート機能(過去の受発注伝票を複写するなど)があるパッケージも多く、それらの使い勝手を選定の一つの指標にするのも良いでしょう。ここ数年はWeb受発注やEDIによる企業間データ連携も増えており、外部システムとのデータ連携を構築できればなお良いです。

≪効率化できる後続業務の例≫
仕入発注書や指示書類(加工指示や入出庫など)を自動作成し、省力化を図れる
未来在庫が可視化され、在庫の適正化を図れる
受発注履歴を残せるようになり、購買/販売計画の見直しに繋げられる
将来発生するコストや売上の見込みが立ち、キャッシュフロー経営に活かせる

注意点としては、ケース数などの受発注単位と重量情報を分けて管理しなければならないということ。食肉業界の場合、受発注のタイミングで重量・金額が確定できない不定貫商品が存在するため、これに対応した機能仕様でないと運用が行き詰まる可能性があります。

入出庫(入出荷)管理からスタートする場合

入出庫入力は、基本的に在庫システム上の帳簿在庫を増減させる処理です(なので在庫管理に重点をおくパッケージに備わっていることが多い)。入出庫データをもとに最終的に仕入/売上計上するため、機能間データ連携がデフォルトであり、二重入力を気にする必要はほとんどありません。モノが先に動き、伝票処理が後追いにならざるを得ない食肉業界では比較的フィットしやすいと言えます。

≪入出庫管理を行うメリット≫
帳簿在庫の増減処理と伝票処理(仕入・売上計上)を非同期に行えるため、帳簿在庫をリアルタイムに処理することができる
ハンディ検品と併用することで、重量確定やその他の商品情報(賞味期限や個体識別番号など)の取得が効率化され、伝票作成がスムーズになる

注意点としては、入出庫入力は帳簿在庫の増減処理であるため、重量確定後に行わなければならないこと。本当にそのタイミングで入出庫処理を行えるのか、実務面からも(業務フロー変更の可能性も含めて)検討する必要があります。なお入出庫機能の一部として、重量確定前に「入庫予定入力」「出庫指示入力」などを行い、これを受発注入力の代わりとする手法もあります。

食肉システム導入事例集ダウンロード

特徴的業務への対応度合いを見極める

ここでは、一般的な販売管理パッケージにはあまり搭載されておらず、食肉業界では比較的カスタマイズ対象となりやすい業務をピックアップして解説していきます。

必須管理項目への対応

納品書への重量表示(量目表出力)や商品の賞味期限管理を行うためには、それに必要なデータ項目がシステム側に用意されていないといけません。不定貫商品や食肉製品の管理を前提としていないパッケージの場合、各種入力画面や出力帳票に項目追加するだけで、カスタマイズ費用がかさみがちです。逆に業界特化型の販売管理システムであれば、おおよそデフォルト対応しています。

≪食肉業界で必要となる管理項目の例≫
ケース数(必要であればバラ数も)と重量による商品管理
業界特有の商品情報管理(製造日&賞味期限、原産地、個体識別番号など)
輸入品を取り扱う際の各種単位(重量のポンド入力、輸入卸における通貨入力など)

加工業務への対応

受注生産を行っている事業者は、受注情報をもとに生産計画や加工指示書の作成を行う必要があります。販売管理システムを見直す際は、システム運用を受注入力からスタートさせると全体効率を上げやすいです。また不定貫商品を取り扱っている場合、加工後の出来高が確定しないと納品書発行ができないため、加工場と連携したシステム構築をすると大きな効果があります。

≪加工機能の例≫
受注データから加工指示書や商品ラベル、生産計画表などを自動発行する
計量器連携または加工場内でハンディ端末による出来高登録を行い、重量データをリアルタイム取得し納品書発行に繋げる

外部倉庫とのやり取りへの対応

外部の営業冷蔵庫を利用している場合、受発注に伴う入出庫指示や、チルド→フローズンへの切り替え指示などの付帯業務が発生します。指示書類の作成はExcelで行っている事業者が多く、外部倉庫の入出荷業務に強いパッケージを選べば大きく業務効率化が図れるでしょう。自社システムの在庫機能と外部倉庫側のWMS(倉庫管理システム)をEDIで接続し、やり取りを完全電子化する方法もあります。

≪外部倉庫関連機能の例≫
出庫指示入力を行い、出庫依頼書や名変依頼書、配送依頼書などを自動発行する
入出庫報告書を受領したタイミングで重量を確定させ、在庫計上/引き落としを行う

出切重量精算への対応

輸入品を商社からロットごと仕入れたり、それを丸ごと他社に転売する際は、概算重量で取引することも多いかと思います。このような取引では、当該ロットの在庫がゼロになった段階で、確定重量をもとに仕入または売上の赤黒伝票を起票しなければなりません。輸入品をメインに取り扱う事業者の場合、これらの一連業務に対応しているかどうかも選定のポイントです。

≪出切精算機能の例≫
在庫の受け払いデータから、出切精算報告書などの書類を自動出力できる
出切精算入力で重量確定を行い、自動的に過去伝票との差額で赤黒伝票を起票する
重量差異で残った在庫データを自動的に精算する

つなぎ販売・直送取引への対応

商品のつなぎ販売、例えば、自社倉庫を通さずに仕入先から販売先に直接納品するケースや、外部倉庫内の他社在庫を貰い受けてそのまま名変販売するようなケースは珍しくありません。仕入と売上が同時発生しているため、一般的な販売管理システムでは、ほぼ同じ内容の仕入伝票と売上伝票をそれぞれ入力することになります。このような取引を想定したパッケージを選ぶと、この二重入力を回避することができます。

≪直送機能の例≫
直送入力を行うと、仕入伝票と売上伝票が同時起票される

食肉管理システム資料ダウンロード

この記事のまとめ

食肉卸が販売管理システムを比較検討する際に、機能面を見極めるポイントとして、「データ入力のスタート地点」「特徴的業務への対応度合い」の2つを挙げさせていただきました。

データ入力のスタート地点については、仕入/売上入力を基準にどこまで業務を遡るかを考えるとシンプルです。加工などの後続業務を効率化する場合は受発注入力からスタートするのが有効で、在庫管理に重点を置く場合は入出庫業務をデータ入力のスタート地点にするとよいでしょう。その場合の入出庫機能の作り方は様々なので、ぜひパッケージベンダーに確認してみてください。

特徴的業務への対応度合いについては、食肉業界で比較的カスタマイズ対象となりやすい業務、例えば「必須管理項目」「加工業務」「外部倉庫とのやり取り」「出切重量精算」「つなぎ販売・直送取引」などへの機能対応をチェックしてみるとよいでしょう。

販売管理システムの見直しを控える食肉事業者さまには、ぜひ本コラムをご参考に、パッケージ選定を成功させて頂ければと思います。

食肉システム導入事例集ダウンロード

関連キーワード

関連コラム

TOP